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ヴェニスの商人の異人論

人肉一ポンドと他者認識の民族学

著者
西尾哲夫

シェイクスピアの有名な戯曲『ヴェニスの商人』で、アントーニオに金を貸すユダヤ人シャイロックの条件は、利子をとらないかわりに、期限までに返せない場合はアントーニオの肉一ポンドを与える、というもの。そして裁判で下された判決は「切りとってもよいのはきっかり一ポンドの肉、一滴の血も流してはならない」だった。
金の貸し借りと、返済不能の場合の人肉という条件。こうした『ヴェニスの商人』の源流研究はシェイクスピア学者によって成されている。しかし、この物語にはどれだけの普遍的な広がりがあるのだろう? アラビアンナイト研究でつとに知られる著者は、積年の研究成果に基づいて、本書で世界中に分布する「人肉一ポンド」モティーフの収集と比較分析を試みる。
自身も含めた民族学者のフィールドワークで記録された民話や、古くから書き文字で伝わる物語の範囲は、中東からヨーロッパ各地、南米からアラン島に及ぶ。そうした物語は、細部を違えながらも基本パターンは共通している。人肉を借金のかたに取るという深層意識は、いったいどのような他者観に拠っているのか? そして日本にそれが見あたらないのは、なぜか?
富の還元、自然との交換行為を背景とする他者との関係を、ただ一つのモティーフを鍵に論じて、物語の構造と生成を明かそうとする意欲的な著作である。 


目次


はじめに 人肉一ポンドとは何か?
第1章 人肉一ポンドと女性の知恵
第2章 『ヴェニスの商人』前史
第3章 『ヴェニスの商人』の物語分析
第4章 人肉一ポンドが象徴するもの
第5章 人肉一ポンドの本源をもとめて
結語 自然と人間との関わり――富をどう分配するか
あとがき
補注
参考文献


著訳者略歴

西尾哲夫
にしお・てつお

1958年、香川県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。言語学・アラブ研究専攻。アラブ遊牧民の言語文化に関する言語人類学的研究や、アラビアンナイトをめぐる比較文明学的研究に従事。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

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ヴェニスの商人の異人論

「ヴェニスの商人の異人論」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/328頁
定価 4,536円(本体4,200円)
ISBN 978-4-622-07775-6 C1098
2013年12月10日発行

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