みすず書房

ヴェニスの商人の異人論

人肉一ポンドと他者認識の民族学

判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数 328頁
定価 4,620円 (本体:4,200円)
ISBN 978-4-622-07775-6
Cコード C1098
発行日 2013年12月10日
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ヴェニスの商人の異人論

シェイクスピアの有名な戯曲『ヴェニスの商人』で、アントーニオに金を貸すユダヤ人シャイロックの条件は、利子をとらないかわりに、期限までに返せない場合はアントーニオの肉一ポンドを与える、というもの。そして裁判で下された判決は「切りとってもよいのはきっかり一ポンドの肉、一滴の血も流してはならない」だった。
金の貸し借りと、返済不能の場合の人肉という条件。こうした『ヴェニスの商人』の源流研究はシェイクスピア学者によって成されている。しかし、この物語にはどれだけの普遍的な広がりがあるのだろう? アラビアンナイト研究でつとに知られる著者は、積年の研究成果に基づいて、本書で世界中に分布する「人肉一ポンド」モティーフの収集と比較分析を試みる。
自身も含めた民族学者のフィールドワークで記録された民話や、古くから書き文字で伝わる物語の範囲は、中東からヨーロッパ各地、南米からアラン島に及ぶ。そうした物語は、細部を違えながらも基本パターンは共通している。人肉を借金のかたに取るという深層意識は、いったいどのような他者観に拠っているのか? そして日本にそれが見あたらないのは、なぜか?
富の還元、自然との交換行為を背景とする他者との関係を、ただ一つのモティーフを鍵に論じて、物語の構造と生成を明かそうとする意欲的な著作である。 

目次

はじめに 人肉一ポンドとは何か?
第1章 人肉一ポンドと女性の知恵
第2章 『ヴェニスの商人』前史
第3章 『ヴェニスの商人』の物語分析
第4章 人肉一ポンドが象徴するもの
第5章 人肉一ポンドの本源をもとめて
結語 自然と人間との関わり——富をどう分配するか
あとがき
補注
参考文献

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