みすず書房

フロイトが精神分析を創始してから一世紀以上の時が過ぎ、こころの科学を取り巻く状況が一変しつつある今日、精神分析はわれわれに何をもたらすのだろうか。
自由連想と解釈をめぐる技法論、トレーニング、カウチの使用や分析の頻度、料金の問題、心理学・精神医学との接点……。わが国の精神分析界を牽引してきた臨床家が、精神分析臨床を実践するうえでの現実的課題と展望を縦横無尽に語る。
テクニカルな議論のみならず、自身を育んだ精神分析家や患者との出会い、臨床家としてのバックボーンなど、随所に語られる三者それぞれのパーソナルな精神分析観が交錯し、精神分析臨床家という生き方が立体的かつリアルに体験されるだろう。
治療として、文化として、また生き方としての精神分析臨床の現在地を探る、出色の精神分析談義。

目次

まえがき

第 I 部 精神分析とは何か?
精神分析との出会い
精神分析家との出会い
精神分析の意味
「精神分析家になる」とはどういうことか
師弟関係をめぐって

第 II 部 精神分析のかたち
「精神分析」と「精神分析的精神療法(心理療法)」
分析可能性
解釈とはどういうことか
「解釈の内容」と「解釈という行為」
解釈の失敗
精神分析のプロセス
料金の問題
精神分析的臨床で生活できるか
カウチ、あるいは分析の空間
精神分析と心理学
精神分析と精神医学
精神分析のテクストを読む
本を書くということ
歳をとるということ

第 III 部 精神分析的心理療法の実際
事例の概要
心理療法過程
導入
面接空間で生起したこと
面接空間で生起した事態の意味
期限設定の意味
無力感を解釈する
愛情への欲求
分析体験の意義
事例検討を終えて

あとがき

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