みすず書房

フロイトの脱出

THE ESCAPE OF SIGMUND FREUD

判型 四六判
頁数 448頁
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-07796-1
Cコード C1011
発行日 2014年1月10日
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フロイトの脱出

ジークムント・フロイトはいかにナチスのはびこるウィーンから脱出し、ロンドンへと逃れたのか?
本書はフロイトの晩年に重点を置き、ロンドンへの脱出の顛末をつづったノンフィクションである。82歳の高齢で亡命するだけの資金もない精神分析家がウィーンを発つまでの日々を辿っていくと、あるひとりの男の存在が浮かび上がってくる——フロイト家の不正蓄財を管理するべくナチスから派遣された将校、アントン・ザウアーヴァルトである。
フロイトの娘アンナは、ザウアーヴァルトの妻マリアンネに宛てて、こう書き残している。「あなたの夫君が私の父を守るように働いていたこと、私たちの生命を危うくするような書類を、かなり長期間にわたってご自身の机の中に隠しておかれたことも私はよく存じております」。ザウアーヴァルトが隠し持っていた書類とは、果たしてフロイト家のどんな秘密だったのか——。
これまでに数々の伝記で語られてきたフロイト像を検証し、フロイトが精神分析学史に遺した功績に触れながら、物語はフロイト家とザウアーヴァルトをめぐる謎の解明へと収斂されていく。

目次

謝辞
著者の覚書

第一章 憎悪の官僚制
第二章 伝記および閲覧制限つき文書
第三章 精神分析家のつくられかた
第四章 セックス、子どもたち、家族の秘密
第五章 ナチスの台頭
第六章 詩人と分析家
第七章 フロイトの80歳の誕生日
第八章 茶碗の中の世界史——オーストリア併合
第九章 フロイトの生涯における最悪の日
第十章 アントン・ザウアーヴァルト
第十一章 自由
第十二章 『モーセという男と一神教』
第十三章 最後の言葉、最後の闘い
第十四章 戦後——1940年から1950年におけるドイツとオーストリアの精神分析
第十五章 秘密の銀行口座

付録一 登場人物一覧
付録二 閲覧制限ファイル
解説——フロイトの戦争  妙木浩之
訳者あとがき
文献
索引