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映画音響論<品切>

溝口健二映画を聴く

著者
長門洋平

小津、黒澤と並び「日本映画の三大巨匠」の一人に数えられる溝口健二。彼はトーキー黎明期の先駆的試み、新派や同時代の前衛芸術との関わりなど、ジャンル、スタイル、テクノロジーの広い範囲で創造性を発揮した。その作品を分析することは、トーキー初期から1950年代黄金期に至る日本映画の音響創作の達成を考えることである。
本書は、溝口映画における音響の効用を、映像および物語との関連から考察する。また、作曲家本人による楽譜・手稿により、音響創造が製作過程から分析される。さらには、映画の音響に関する質の高い文献を紹介しつつ、議論の整理・検討がなされている。
映画を聴覚面から分析する理論枠組みを提示し、視聴覚文化、メディア研究ほか多方面の専門家が活用できる方法論として提供する。付録:大谷巌(録音技師、1950年代大映京都で製作された全ての溝口映画を担当)ロング・インタヴューは、資料としてたいへん貴重なものである。
『東京行進曲』『ふるさと』『浪華悲歌』『残菊物語』『近松物語』『赤線地帯』といった作品を緻密に分析し、最新の地平を示す先駆的研究。映画学、音楽学のみならず、テクノロジー、ジェンダー、ポストコロニアル理論の視座をも含めた映画音響論が展開される。

2014年、第36回サントリー学芸賞〈芸術・文学部門〉受賞。


目次



1. 音響と映像/2. 射程/3. 本論の構成/4. 用語の整理

第一章 音の場所――映画の音響を分類するための基礎的考察
第一節 音の空間
1. 音はどこから聞こえてくるのか/2. スピーカーの位置
第二節 音の次元
1. 『ジャズ・シンガー』と物語世界の外側/2. 物語世界と音響との関係
第三節 音楽の効用
1. 音響の素材/2. 聴かれざるメロディ――映画にはなぜ音楽が存在しているのか/3. 映画の音楽――その理論と実際
第四節 音楽と映像の印象
1. 音楽の恣意性/2. 対位法/3. 投錨と異化

第二章 『東京行進曲』(1929)――挫折したトーキーの試み
第一節 日本初期トーキー映画史概観
1. 「トーキー映画」とは何か/2. 発声活動大写真からミナトーキーへ
第二節 トーキー化の失敗
1. 映画と音楽のタイアップ戦略/2. 小唄映画としての『東京行進曲』

第三章 『ふるさと』(1930)の音――トーキー時代の黎明
第一節 日本映画言説における『ふるさと』の位置
1. 「不完全」なトーキー作品?/2. 『ふるさと』の音質
第二節 『ふるさと』におけるパート・トーキーという形式
1. 藤原義江の歌の伴奏はどこから聞こえてくるのか/2. サウンド・ブリッジ
第三節 音と映像の対位法
1. ドヴォルザーク《交響曲第九番『新世界より』第二楽章》/2. 画面と音とのカットバック/3. ワンショット内カットバック/4. 取り込まれたモンタージュ

第四章 『浪華悲歌』(1936)の音――伴奏音楽の不在とリアリズム
第一節 女性の声
1. 電話交換室による音声の遮断/2. 電話交換手/3. 女性性というコード
第二節 伴奏音楽の不在
1. 物語世界内音楽/2. 伴奏音楽の意味産出作用
第三節 リアリズム
1. 映画的リアリズムの四つの側面/2. 沈黙するモダンガール

第五章 『残菊物語』(1939)の音――声、沈黙、怪談
第一節 「溝口的」美学の完成
1. ロングショット・ロングテイク/2. 「グリフィス・コード」の違反
第二節 顔のないヒロイン
1. 女優・森赫子/2. 主人公としての声
第三節 『残菊物語』の音響設計
1. 音の既視感/2. 沈黙
第四節 歪曲された物語――「船乗込み」シークェンスの場合
1. あのはやしを聞いているのは誰か/2. 疑わしき「ヒロインの死」/3. 東海道四谷怪談

第六章 『近松物語』(1954)の音――「不完全」な音楽の美学
第一節 『近松物語』と早坂文雄
1. 「日本的映画音楽」という神話/2. 早坂文雄
第二節 『近松物語』をどう聴くか
1. 下座音楽/2. 「日本的なるもの」の幻想
第三節 深井史郎から早坂文雄へ
1. 深井史郎の対位法/2. 『近松物語』、「不完全」な音楽として

第七章 『赤線地帯』(1956)の音――日本映画の戦後と現代音楽
第一節 赤線地帯論争
1. 黛敏郎vs.津村秀夫/2. 赤線地帯論争、その後
第二節 黛敏郎
1. 戦後日本作曲界の旗手/2. 溝口健二との出会い/3. 十二音技法
第三節 客観主義的映画音楽の実践
1. 『赤線地帯』テーマ曲の音列/2. 異化/3. 『赤線地帯』の二人の主人公/4. 喜劇監督=溝口健二

おわりに

大谷巌インタヴュー
I 聴き手=長門洋平(2012年10月21日、京都・大谷宅にて収録)
II 聴き手=長門洋平、木下千花、佐相勉(2012年11月18日、京都・大谷宅にて収録)


あとがき
溝口健二フィルモグラフィ
書誌
索引


著訳者略歴

長門洋平
ながと・ようへい

1981年生まれ。総合研究大学院大学文化科学研究科国際日本研究専攻、博士後期課程修了。博士(学術)。現在、国際日本文化研究センター機関研究員、京都外国語大学ほか非常勤講師。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

長門洋平(映画/音楽研究、ギタリスト)
<Nobody 2014年8月>

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「映画音響論」の画像:

映画音響論

「映画音響論」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/424頁
定価 7,480円(本体6,800円)
ISBN 978-4-622-07809-8 C0074
2014年1月22日発行
<ただいま品切です>