みすず書房

ノモンハン1939

第二次世界大戦の知られざる始点

NOMONHAN, 1939

判型 四六判
頁数 344頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-07813-5
Cコード C1021
発行日 2013年12月25日
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ノモンハン1939

1939年5月-9月。ソ連と日本それぞれの傀儡国家であるモンゴルと満洲国の国境をめぐって起きたノモンハン事件は、10万近くの人員と1000もの戦車・航空機を動員、死傷者は3-4万に及んだ。「事件」と呼ぶにはあまりにも大規模である。結果はソ連・モンゴル軍の勝利に終わり、勝者側主張の国境線にほぼ沿うかたちで決着した。日本陸軍にとって初の本格的近代戦における敗北は、当時つとめて伏せられ、欧米の注視も極東の一隅には及ばない。そのためか、この戦闘は長らく単なる国境衝突事件として受容されてきた。
欧米では知名度の低いこの戦闘を初めて知った時、著者はそれが独ソ不可侵条約締結前夜に勃発したことに衝撃を受けた。その点を追究した博士論文の執筆以来、40年間温めてきた研究の成果である本書は、これが歴史の傍流の一事件などではなく、ヒトラーのポーランド侵攻、モスクワ攻防戦における赤軍の勝利、真珠湾攻撃など、その後の出来事の導火線になったことを説得的に示している。
第二次世界大戦に至る国際情勢は複雑を極める。本書はそれを1853年の黒船来航とクリミア戦争に遡って明快に述べ、知的好奇心を北東アジアに引き寄せられた英語圏読者の高評価を得た。日本でも、欧州戦線と太平洋戦争の密接な連動の結節点として、これまでにないノモンハン像を提供するだろう。日中戦争との関係を補足した解題も、より重層的な考察を促している。

目次

謝辞


第一章 過去の遺産
戦争と革命/スターリンの産業革命/日本における恐慌、超国家主義、軍国主義/日ソ関係の悪化

第二章 世界の状況
ファシズムの脅威の出現と人民戦線・統一戦線/乾岔子島事件/日中戦争/ドイツと日本/西側民主主義国と日本・ドイツ・ソ連の関係/マドリードとミュンヘン——西欧における統一戦線の失敗/スターリン、徒手空拳の6カ月/分岐点/日独軍事同盟の行方

第三章 張鼓峰
幕開け/戦闘/張鼓峰の意味

第四章 ノモンハン——序曲
背景/関東軍の姿勢/紛争の発生/5月28日の戦闘

第五章 ノモンハン——限定戦争における戦訓
関東軍の7月攻勢/ジューコフの8月攻勢/脱出行動後の動き

第六章 ノモンハン、不可侵条約、第二次世界大戦の勃発
ノモンハンと不可侵条約/ソ連と日本の緊張緩和

第七章 揺曳するノモンハンの影
戦訓の選択/ノモンハン、そして真珠湾への道/歴史の岐路に立って考える/ノモンハンと限定戦争

結語

原注
解題  麻田雅文
訳者あとがき
写真一覧
文献
索引

書評情報

保阪正康(ノンフィクション作家)
北海道新聞2014年4月13日
中島誠之助(古美術鑑定家)
産経新聞2014年3月26日
信濃毎日新聞
2014年3月9日
神戸新聞
2014年3月9日
北國新聞
2014年3月2日
塚本勝也(防衛研究所主任研究官)
日本経済新聞2014年2月16日

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