みすず書房

ジャッキー・デリダの墓

LE TOMBEAU DE JACKIE DERRIDA

判型 四六判
頁数 304頁
定価 4,070円 (本体:3,700円)
ISBN 978-4-622-07829-6
Cコード C1010
発行日 2014年4月18日
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ジャッキー・デリダの墓

「デリダについて書くことが、ずっと私にはできなかった。まして、彼についての著作であることを明示するようなタイトルを、自分の本のために選ぶことは。本書に収録された、彼の死去に続く日々に綴った文章のタイトルには、自分でも説明し切れない、絶望的な抵抗の痕跡が認められる。」
デリダ没後十年、ようやくここに書物のかたちをまとった文章群には、悲痛があり、内省があり、彷徨がある。各編の初出は、機会に応じて需められた。デリダに「師として、友として、いずれにせよ同時代を生きる一個の存在として接する機会に恵まれ、内心で、ときには実際に、彼と対話を始めてからの」作品群に誘発されつつ、『盲者の記憶』『名を救う』『マルクスの亡霊たち』『友愛のポリティックス』『精神分析の抵抗』『ならず者たち』など後期デリダの著作を論究し、そしてデリダの思考の糸に導かれ、ヘーゲル、フロイト、ラカン、フーコー、ジュネ、ナンシー、サファー・ファティらに言い及ぶ、このような文章を、鵜飼哲以外のいったい誰に書けるだろう。
ジャッキー・デリダという名の、「単に哲学者だったばかりではない、そして単にフランス人だったばかりではない、ある人」の「墓」でもある本書は、墓の代補としてのエクリチュールであるのみならず、訃報に接して書き記された言葉をけっして裏切らない。「デリダの友であったと過去形で語ることを彼の思想は許さない。彼の友であることは、いつまでも来たるべき経験であるだろう。彼の死は終わらざる出来事であるだろう。そのようにして彼は生き続け、考えることを教え続けるだろう。」

目次

〈友〉なるデリダ
断片、あるいはデリダの「ように」
絵画に〈声〉が来るとき——アトラン「カヒナ」(1958年)
祈りと無神論——『名を救う』
リス=オランジス、2004年8月8日
名のおかげで
   *
〈裸〉の師
盲者のオリエント
怪物のような「かのように」——日本における政治上の嘘の歴史のために
デリダにおけるヘーゲル——『弔鐘』における〈晩餐〉の記号論を中心に
レジスタンスを愛すること——『精神分析の抵抗』
葬送不可能なもの——『マルクスの亡霊たち』
来たるべき民主主義への挨拶——『ならず者たち』
戦略、スタイル、情動——ジャン=リュック・ナンシーへの三つの問い
   *
解体と政治
「死せる叡智」と「生ける狂気」——〈さまよえる星〉の比較文学
神の裁きからの演劇の〈誕生〉——『バルコン』から『オルダリ』へ
明かしえぬ共犯性——ジュネをめぐる二つの集いのこと


初出一覧

タイトルをめぐる彷徨——あとがきにかえて

書評情報

若松英輔
読売新聞2014年7月6日
郷原佳以(フランス文学)
週刊読書人「2014年上半期の収穫から」2014年7月25日
信濃毎日新聞
2014年7月13日

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