みすず書房

病や障害と認定されるとはどういうことか。認定されなければ社会で生きづらく、認定されれば「自分のせいではなく、病のせい」だと免責される。では、認定されなければ社会に居場所はないのだろうか。
その最前線が、発達障害・ADHD・アスペルガー症候群・高機能自閉症……という「連続体」だ。病と生の様式のあいだを揺れ動くこのあいまいな連続体は、どのように社会に登場したのか。社会における所有と分配の仕組みのもとで、どう位置づけられたのか。
名前がつき、対処法が発明され、自分のせいではないと免責される。それだけではすまないものがある。〈私たちは近代社会の「たてまえ」として要求されている分よりも大きな「責任」を負っているのである。「自己責任」という言葉を厳格に使えば、自己責任でないものについても自分に降りかかってくるのが、この社会の実際のところなのである〉(本書より)。
自分を証明しなくていい社会というのは非現実的だろうか? 当事者が編み出してきた生存の方法を紹介し、社会への着地のあらゆる可能性を考え直して、ともに生きる方法を探る。

目次

序章
1 発達障害者の苦難は明るい可能性を示している
2 知識・行為・責任
3 分けて、誰にとってのことか考える

〈第I部 起こったこと・問われること〉
第1章 始まり広がっていったこと
1 わかることについて
2 どうするのかについて
3 免責について
第2章 本人がわかり、語る
1 本人がわかり語ること
2 始まり広がっていくこと
3 わかってよかったこととそれだけでもないこと
第3章 誤解は解ける、が
1 家族ではないこと
2 わかること
第4章 身を処すこと
1 身の処し方を知る
2 いつもうまくはいかない
第5章 AC
1 帰責し免責されればよいと言い切る
2 その上でのためらい
第6章 免責される/されないこと
1 免責されるが逃れられない
2 免責されないこと

〈第II部 回答の試み〉
第7章 社会がいる場所
1 社会がいる場所
2 発達障害・自閉……について
第8章 処世と免責とわかることについて
1 対処
2 免責
3 わかること
補章 争いと償いについて

あとがき
文献表

書評情報

小柳正弘(沖縄国際大学教授)
週刊読書人2014年10月17日(金)
石川憲彦(林試の森クリニック)
精神医療 PSYCHIATRY2005年4月

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