みすず書房

世界宗教の発明

ヨーロッパ普遍主義と多元主義の言説

THE INVENTION OF WORLD RELIGIONS

判型 A5判 タテ210mm×ヨコ148mm
頁数 504頁
定価 7,480円 (本体:6,800円)
ISBN 978-4-622-07861-6
Cコード C1010
発行日 2015年3月16日
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世界宗教の発明

「幾世紀にもわたって、ヨーロッパ人は、世界の諸民族を四分する習慣を遵守してきた。キリスト教徒、ユダヤ教徒、マホメット教徒、その他である。(…)この因襲的な整理法は一九世紀前半に勢力を失いはじめたのであるが、二〇世紀初めの二、三十年の間に、まったく新しい体系が出現する。すなわち、ざっと十個あるいは十二、三個ほどの“世界宗教”のリストである」

本書は、近代ヨーロッパのアイデンティティ形成、すなわち今日までにヨーロッパが、いかにして普遍史の先導者という自己認識に到達したのかを、「世界宗教」という知の編成を通じて探るものである。
この編成に最も重要な転換をほどこしたのは、一九世紀の比較言語学である。自在な屈折語(語形変化)をもつインド‐ヨーロッパ語(アーリア語)が発見され、それにともなって仏教がキリスト教の起源であるとまで考えられるようになる。一方、膠着語にもとづくセム語は貶められ、セム系のイスラム教はアラブ人だけの民族宗教に格下げされた。
二〇世紀までの植民地支配をもたらしたヨーロッパの普遍主義が、みずからの起源を再構築するうえで、古代ギリシャよりも古い「原インド‐ヨーロッパ」という系譜を発見した過程を、「世界宗教」という言説から読み解く、卓抜なる思想史の書。

「本書を読み進めるほどに、読者は日本の宗教言説にも反省の目を向けざるをえなくなるだろう」(解説・藤原聖子)

目次

はじめに

序章
1 今日の学界における「世界宗教」
2 他者化の言説としての宗教の言説
3 本書の構成
4 理論の時代における歴史の記述——一つの簡単な方法叙説として

第一部
第一章 「世界宗教」成立前史
1 二つの世界大戦の時代における「世界宗教」
2 近代初期の分類法——諸民族(ネーション)の序列(オーダー)
3 科学の誕生以前

第二章 比較神学の遺産
1 二人の先駆者——フレデリック・モーリスとジェームズ・クラーク
2 表象(レプリゼンテーション)のための戦略
3 批判者——チャールズ・ハードウィック
4 さまざまな準科学的比較論

第二部
第三章 世界宗教の出産トラウマ

第四章 世界宗教、仏教
1 仏教以前
2 ヨーロッパの仏教発見
3 仏教と、ヨーロッパの未来

第五章 言語学とヨーロッパの過去における裂け目の発見
1 インド-ヨーロッパ語の過去の発見
2 比較文法の誕生
3 屈折の至高性
4 セム的なるものの本質——エルネスト・ルナン

第六章 セム的宗教、イスラム
1 近代以前・近代初期のヨーロッパにとってのイスラム
2 一九世紀ヨーロッパにとってのセム主義とアーリア主義
3 アラブ民族宗教としてのイスラム——アブラハム・キューネン
4 アーリア的イスラムとしてのスーフィズム——オットー・フライデラー

第七章 時季外れの言語学者(フィロロジスト)——F・マックス・ミュラーの言語と宗教の分類
1 貴族階級としての聖典宗教
2 言語の統一起源の可能性
3 「トゥラン」の問題点
4 「トゥラン」の真の問題点
5 二人のビュルヌフの物語

第三部

第八章 空白期間——二〇世紀初期オムニバスガイド
1 一九世紀の遺産——『東洋聖典全集』(1879-1910)
2 万国宗教会議(1893年)
3 アマチュア界も発言する——私立財団と基金講座
4 植民地の自己表明
5 過渡期のシステム

第九章 覇権の問題——エルンスト・トレルチと再構築されたヨーロッパ普遍主義
結論のない科学的あとがき

解説(藤原聖子)
訳者あとがき
文献一覧
索引