みすず書房

「双子の弱い視力で見渡せたのは、赤や黄色や緑色に彩られた畑が網の目のように広がる大地と、そこここに点在する真っ白な農家だけだった。彼らは、そうした農家で暮らし、死んでいったウェールズ人の父祖たちのことを考えながら、ケヴィンが言ったことを信じるのは——不可能でないにせよ——とても難しいと思った。世界はいつ何時大爆発で破滅しても不思議はないだなんて、と。」

20世紀の到来と同時にウェールズとイングランドの境界線上の家に生まれた双子の兄弟ルイスとベンジャミン。この村から一歩も出ないで二人は人生を送る。二つの大戦も、技術革新による生活の変化も、同じベッドに眠る二人にとって遠い世界。髪は枕カバーより真っ白になった80歳の誕生日、セスナに乗った双子は上空から自分たちの生きてきた「世界」を初めて眺める。そして……
名作『パタゴニア』で彗星の如く登場し圧倒的な筆力で多くの評価と読者を得ながら、わずか十年でこの世を去った伝説の作家チャトウィン。『黒ヶ丘の上で』はチャトウィンが遺した唯一の長編小説である。没後25年にして、ようやく名訳で到来!

書評情報

金子徹(記者)
しんぶん赤旗(日曜版)2014年11月23日
堀江敏幸
毎日新聞2014年9月21日
木下卓(愛媛大学名誉教授・英米文学)
週刊読書人2014年9月26日
尾崎真理子(読売新聞編集委員)
読売新聞2014年9月21日

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