みすず書房

グローバリゼーションと惑星的想像力

恐怖と癒しの修辞学

判型 四六判
頁数 336頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-07879-1
Cコード C1010
発行日 2015年3月16日
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グローバリゼーションと惑星的想像力

今日の世界を駆け巡っている二つの言葉についての考察が、本書の主要なテーマである。一つは「グローバリゼーション」であり、もう一つは「テロ」である。
著者はこの二つの問題に接近するために、一つは、アメリカの欲望の源泉として、19世紀に端を発するモンロー・ドクトリンやトマス・ペインの分析に向かう。そこで頻出する「こちら側」「あちら側」のレトリックは、今日どのようなかたちで反復・増幅されているのか。
もう一つは、ポール・ド・マンから、別の劇場としての「パラバシス」という教えを受け継ぎ、「惑星」概念の重要性を訴えたガヤトリ・スピヴァク、9・11後にイスラムからの攻撃の意味を分析しようとして、「テロリストたちを免責するのか」と非難されたジュディス・バトラー、出来事とは「自分が理解していないこと」そのものであると言って自らの理解の限界に向き合ったジャック・デリダ、ホロコーストという人類最大規模の憎しみの対象となったユダヤ人として、そのシステムを見極めようと考え抜いたハンナ・アレント。これら思想家の仕事を受け止めながら、テロという憎しみの連鎖が広がるように見える現代世界の状況を歴史的パースペクティヴに置き、事態のからくりを解き明かす方策を、著者は探ろうとする。
事態に即応できない人文研究者だからこそ、できることがあるのではないか。本書は、現代世界を考察するもう一つの見方の提示であり、人文学のあり方を問う倫理の書である。

目次

序 グローバリゼーションの中の人文学——魅惑する時間と偽りの約束

I グローバリゼーションと惑星的想像力
第1章 globeの濫(カタク)喩(レーシス)——球体上のアメリカ
第2章 西半球という「こちら側」——モンロー・ドクトリンのスピーチ・アクト

II 恐怖と知性の淫靡な関係
第3章 テロルと反知性主義——恐怖の中で/恐怖を超えて思索すること
第4章 恐怖と快楽のはざまで——マイケル・ジャクソンと大衆の欲望
第5章 「核」の空間/言語の空間——「コンテインメント」 と「抑止」のレトリック

III 二十一世紀のトラウマ
第6章 盲目と閃光——視覚の病としてのトラウマの原点には爆発がある
第7章 二十一世紀グローバル・コミュニティの不安——PTSDの系譜学に人文学が寄与できること

IV 言語による/言語との闘い
第8章 傷と声——ポール・ド・マンにとって言語とは何だったのか?
第9章 グローバリゼーションと反響し合う声——ミズムラ、スピヴァク、ド・マンの絆

V 許しと声
第10章 アメリカ国家のメランコリー——記号のパイオニア、ジュディス・バトラー
第11章 暴力と赦し——アレント、デリダ、そして二十一世紀の修辞学

あとがき
索引

書評情報

高村峰生(神戸女学院大学准教授)
図書新聞2015年7月11日

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