みすず書房

にもかかわらず

1900-1930

TROTZDEM

判型 A5判
頁数 336頁
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-07887-6
Cコード C1052
発行日 2015年9月25日
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にもかかわらず

「文化の発展とは、日用品が装飾から解放されることと同義なのだ。パプア人は身のまわりのものすべてを装飾で覆い尽くす。みずからの顔と体から始まり、弓や船にいたるまで飾りたてる。だが、いまどき刺青とは退廃の証であり、刺青を入れている者といえば犯罪者か身持ちの悪い貴族崩れだけである。教養ある者はパプア人と違い、刺青の入った顔より刺青の入っていない顔のほうが美しいと思うのである。たとえ刺青のデザインがミケランジェロやコロマン・モーザーの手になるものだとしても」
「時代に合った手工業を、そして時代に合った日用品を求めるなら方法はひとつ。建築家を毒殺せよ」

モダニズム移行期の巨匠として広く認められながらも、そのような歴史理解をはるかに逸脱した謎でありつづけるアドルフ・ロースの主著、初の全訳。都市・建築のみならず家具、工芸品、ファッション、音楽、料理、テーブルマナーにいたるまで——20世紀初頭のウィーンで盟友カール・クラウスとともに論陣を張ったスキャンダラスな毒舌家による同時代「スペクタクル社会」批判が展開する。近代建築宣言の先駆として名高い「装飾と犯罪」をはじめ、「ミヒャエル広場の建物に関するふたつの主張とひとつの付言」「現代の公団住宅について」「建築」「他なるもの」「郷土芸術」「家具の終焉」「ペーター・アルテンベルクとの別れ」「アーノルト・シェーンベルクと同時代人」ほか全31篇(本邦初訳14篇)。

目次

はじめに

「他なるもの」より  アドルフ・ロース著「オーストリアにおける西洋文化入門小冊子」第1期
わが人生の断片より
陶器
ウィーンにある最高の内部空間、最高の邸宅、最高の消えゆく建物、最高の新建築、最高の散歩道について  あるアンケートへの回答
私の建築学校
文化
無駄(ドイツ工作連盟)
文化の堕落
装飾と犯罪
ウルクに  「装飾と犯罪」をばかにしてくれた記念に
建築
ちょっとした出来事
ウィーン人に告ぐ  ルエーガー逝きし日に記す
ミヒャエル広場の建物に関するふたつの主張とひとつの付言
音響効果の不思議
ベートーヴェンの病める耳
カール・クラウス
山村で家を建てるためのルール
郷土芸術
口出しするな!
ペーター・アルテンベルクとの別れ
読者からの質問と回答
都市住民が移住する日
住むとは何かを学ぼう!
家具の終焉
装飾と教育  あるアンケートへの回答
アーノルト・シェーンベルクと同時代人
現代の公団住宅について  ある講演にて
短い髪  あるアンケートへの回答
家具と人間  工芸に関する本に寄せて
ヨーゼフ・ファイリッヒ

訳注  早稲田大学建築学科中谷礼仁研究室
年譜  岸本督司
解題  中谷礼仁
訳者あとがき

書評情報

松畑強(建築家)
図書新聞2016年1月9日号
五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)
朝日新聞2015年11月29日(日)

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