みすず書房

奴隷貿易が続いた400年の間に、1240万人の奴隷がアフリカから大西洋を南北アメリカに運ばれ、プランテーションの無賃労働者となった。
アトランティック・ヒストリーの第一人者にして海賊の専門家、マーカス・レディカーは、この身の毛もよだつ最悪の悲劇を、前代未聞の視点から語り、わたしたち読者を奴隷船の現場に連れて行く。
レディカーがここに再現させるのは、怪物的な「浮かぶ地下牢」と、運搬中に200万人が命を落とした、恐怖の「中間航路」である。飢餓と、病気と、悲運に直面した、奴隷たちの日常、懲罰と拷問の極端な暴力と、蔓延する死である。しかしまた、一触即発の奴隷たちと同じ船に閉じ込められた乗務員たちの恐怖を、きつい階級関係を、水夫と囚人との関係を、歴史家は想起させる。さらに、衝突にも記述を割き、さまざまな言語集団出身の奴隷たちが意思の疎通をはかりつつ組織して立ち上がった血まみれの反乱を、厖大な史料から発見して描き出す。まさに、アフリカン・アメリカン文化の萌芽であった。
奴隷貿易廃止200周年を機に刊行され、ジョージ・ワシントン図書賞をはじめ数々の賞に輝いた、黒い大西洋史の画期的著作。笠井俊和解説「闘う歴史家レディカーと奴隷船研究」

目次


第一章 奴隷貿易における、生と死、そして恐怖
第二章 奴隷船の進化
第三章 中間航路への道
第四章 オラウダ・エクィアーノ——驚愕と恐怖と
第五章 ジェイムズ・フィールド・スタンフィールドと浮かぶ地下牢
第六章 ジョン・ニュートンと平安の王国
第七章 船長が創る地獄
第八章 水夫たちの巨大な機械
第九章 捕囚から船友へ
第十章 奴隷船《ブルックス》の長い旅
エピローグ 終わりなき旅路

訳者後書き(上野直子)
解説「闘う歴史家レディカーと奴隷船研究」(笠井俊和)

謝辞
原注
索引

書評情報

旦敬介(作家・翻訳家/明治大学教授)
読売新聞「2016年の3冊:知識の源、心に響く物語」2016年12月25日(日)
青木大輔
本の雑誌「新刊めったくたガイド」2016年10月