北朝鮮の核心
そのロジックと国際社会の課題
THE REAL NORTH KOREA

判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 368頁 |
定価 | 5,060円 (本体:4,600円) |
ISBN | 978-4-622-07895-1 |
Cコード | C1031 |
発行日 | 2015年6月10日 |

THE REAL NORTH KOREA
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 368頁 |
定価 | 5,060円 (本体:4,600円) |
ISBN | 978-4-622-07895-1 |
Cコード | C1031 |
発行日 | 2015年6月10日 |
略史から政権分析、リアルな日常を伝えるコラムまで、最新の基礎知識と政策論を網羅。在韓国ロシア人歴史家による今最も充実した北朝鮮論。2015年改訂版。
19世紀半ば、拡大する不平等を目の当たりにしたマルクスは初期資本主義に代わる思想を生み出す。それはレーニン主義に継承され、東アジアの理想主義者によって民族救済策として貪欲に取り込まれていった。ソ連の強大な影響力の元に建国された北朝鮮は、ソ連が「非スターリン化」に転じた後も独自の道を歩む。金日成が築いた体制は一定の安定を築いたかに見えたが、金正日政権下で困難の度を増し、金正恩に権力が引き継がれた今、謎は深まるばかりだ。すでに政治的「化石」となったこの国を未だ存続可能にしているのは何か。その崩壊はいつ、どのような形で訪れるのか。それにどう備えるべきか。
長年の実証研究をふまえた最新の北朝鮮略史を提示しつつ、本書は来るべき北朝鮮崩壊を見すえた政策提言を行っている。敢えて歴史家の仕事から踏み出しているのは、冷戦期のソ連に生まれ、北朝鮮に短期間暮らし、現在はソウルの国民大学で教鞭を執る著者が学術研究と体感によって培った問題意識と、国際社会の態度との落差に危機感を抱くためであろう。著者は北朝鮮一般市民の「健全性」に実感をともなう信頼をおいているが、それは情緒的な楽観論に流れるのではなく、むしろ複眼的な分析の鋭さを増し、独自の冷徹な現実主義を築くベースとなっている。
2013年に英米で初版が好評を得たのち、本書は韓国でも刊行された。2015年には、金正恩政権に関する章の追加を含む全面改訂が施された。日本語版はその最新版に基づいている。
序——驚異的な理性の国
第一章 金日成のつくりあげた社会とその軌跡
金大尉の帰国/戦争とその影響/モスクワと北京のあいだで——金日成の北朝鮮が推し進めた外交/韓国との関係/指令社会/収容所国家/金日成の世界観/悪いことばかりではない/主体思想の誕生と金正日の登場、超スターリン主義経済の緩やかな死
コラム 薄情な友人/女性と仕事/神聖なる肖像/ロイヤルファミリーの色恋沙汰/算数の教科書より
第二章 危機の二〇年
そして世界は変わった/よみがえる資本主義/薄れる国家の存在感/脱出を決意する——大挙して、とまではいかないが……/たどり着いた場所は天国(あるいは資本主義地獄)/変わる世界観
コラム カーチャ・シンツォヴァの哀れな一生/ニューリッチ/2011年のありふれた一日
第三章 生き残りの論理
改革は政治的集団自殺に等しい/市場経済の(不首尾な)取り締まり/絶体絶命の危機——2009年の貨幣改革/飢餓だけが消え去った
コラム 労働者の給与
第四章 最高領導者とその時代
ついに登場、「若大将」/新しい時代の唐突な到来/守旧派の失脚/新しい政策/論理の転換/緊張する南北関係
コラム モニュメントの街
第五章 生き残りをかけた外交
核カードをちらつかせる/援助最大化外交/韓国の状況(三八六世代の台頭とその結果) /太陽の温かかった一〇年/斜陽/中国の参入
コラム 使える投資家を探して
小休止(未来の輪郭線——次の二〇年間に何が起きるか)
第六章 何をなすべきか
鞭が弱すぎたわけ/飴が甘くなかったわけ(または「戦略的忍耐」が不適切である理由)/長期的視野で考える/関与することの隠れたメリット/情報を届ける/脱北者に寄り添う
コラム 統一の花
第七章 準備を整える
最悪の事態について考える/最も無難な解決策としての連邦制/鎮痛剤を少しだけ投与する
コラム 統一の費用
結 論——容易ならぬ結末
謝辞
解説 李鍾元
原注
索引