みすず書房

最初の詩集から50年、18冊の詩集、471篇の詩を収める唯一の完成版。
硬質な抒情詩人、歩く人旅する人としての詩人、深い人生哲学に裏打ちされた成熟の詩人……その全貌を総覧するとき、社会も文化も変容する半世紀に、一筋の柔軟な線を貫いた、格別の「読み手」にして独特の「書き手」である、オサダヒロシという稀有な詩人の存在に目を開かれるに違いない。「場所と記憶」(書き下ろし35枚)を巻末に付す。

目次

われら新鮮な旅人
メランコリックな怪物
言葉殺人事件
深呼吸の必要
食卓一期一会
心の中にもっている問題
詩の絵本
世界は一冊の本
黙されたことば
記憶のつくり方
一日の終わりの詩集
死者の贈り物
人はかつて樹だった
幸いなるかな本を読む人
世界はうつくしいと
詩ふたつ
詩の樹の下で
奇跡—ミラクル—

場所と記憶(書き下ろし)
あとがき抄
編集について
結び
収録詩目次

収録詩目次


『われら新鮮な旅人』
  吊るされたひとに
  八月のひかり
  無言歌
  春をみつける
  多島海
  誤解
  愛について
  ふたり
  パッション
  証言
  婚礼 I
  婚礼 II
  ブルー・ブルース
  言葉と行為のあいだには
  ぼくたちの長い一日
  かなしみの海
  われらの船
  波
  貝殻
  われら新鮮な旅人
  クリストファーよ、ぼくたちは何処にいるのか
  夢暮らし

『メランコリックな怪物』
  探した
  叫んだ
  覚えた
  黙った
  海を見にゆこう
  ラヴレター
  言ってください
  夢の階級
  こわれる
  ぼくは借りを返さなければならない
  真実にいっぱいくわせろ
  バベル
  どこへも
  子守歌のための詩
  きみは誰
  いやだ、ぼくは
  わが詩法
  阿蘇
  カナダ・インディアンの青年が言った
  冬のアイオワでユージンがぼくに言った
  金髪のジェニー
  監獄ロック
  ロング・ロング・アゴウ
  消息
  荒馬と男と赤ん坊
  クリストバル・コロンの死
  nowhere
  詩人の運命

『言葉殺人事件』
  殺しうた
  誰が駒鳥を殺したか
  言葉の死
  千人語 1
  千人語 2
  千人語 3
  千人語 4
  千人語 5
  嘘のバラッド
  何のバラッド
  われわれの無残なバラッド
  老いてゆくバラッド
  戦争のバイエル
  この世のバラッド
  友人のバラッド
  弔問のバラッド
  逆さ男のバラッド
  スラップスティク・バラッド
  淋しい男のバラッド
  おかし男の歌(長谷川四郎作)
  ひとはねこを理解できない
  ひとの歯のバラッド
  一足の靴のバラッド
  一冊の本のバラッド
  探偵のバラッド
  殺人のバラッド
  すばらしい死に方
  判決のバラッド
  もちろん正しいバラッド
  ものがたり 1
  ものがたり 2
  そして誰もいなくなるバラッド
  賢者のバラッド
  殺人者の食事
  幸福なメニューのバラッド
  海辺のレストラン
  いつも同じバラッド
  掻きこわす人のバラッド
  言葉のバラッド
  四ツ算えろ
  Pathography
  パソグラフィー(谷川俊太郎訳)
  借金としての言葉のバラッド
  ひつようなもののバラッド
  バラッド第一番

『深呼吸の必要』
 あのときかもしれない
 おおきな木
  おおきな木
  花の店
  路地
  公園
  山の道
  驟雨
  散歩
  友人
  三毛猫
  海辺
  梅堯臣
  童話
  柘榴
  原っぱ
  影法師
  イヴァンさん
  団栗
  隠れんぼう
  賀状
  初詣
  鉄棒
  星屑
  ピーターソン夫人
  贈りもの

『食卓一期一会』
 台所の人々
  言葉のダシのとりかた
  包丁のつかいかた
  おいしい魚の選びかた
  梅干しのつくりかた
  ぬかみその漬けかた
  天丼の食べかた
  朝食にオムレツを
  冷ヤッコを食べながら
  イワシについて
  かぼちゃの食べかた
  ときには葉脈標本を
  ふろふきの食べかた
  戦争がくれなかったもの
  餅について
 お茶の時間
  テーブルの上の胡椒入れ
  何かとしかいえないもの
  ドーナッツの秘密
  きみにしかつくれないもの
  ジャムをつくる
  クロワッサンのできかた
  サンタクロースのハンバーガー
  ショウガパンの兵士
  パイのパイのパイ
  キャラメルクリームのつくりかた
  いい時間のつくりかた
  パリ=ブレストのつくりかた
  イタリアの女が教えてくれたこと
  食ぺもののなかには
  コトバの揚げかた
  ハッシュド・ブラウン・ポテト
  ジャンバラヤのつくりかた
  アップルバターのつくりかた
  メイプルシロップのつくりかた
 食卓の物語
  ユッケジャンの食ぺかた
  ピーナッツスープのつくりかた
  ガドガドという名のサラダ
  カレーのつくりかた
  シャシリックのつくりかた
  パン・デ・ロス・ムエルトス
  テキーラの飲みかた
  トルコ・コーヒーの沸かしかた
  ギリシアの四つの言葉
  アイスバインのつくりかた
  卵のトマトソース煮のつくりかた
  絶望のスパゲッティ
  パエリャ讃
  ブイヤベース・ア・ラ・マルセイエーズ
  ブドー酒の日々
  ポトフのつくりかた
  十八世紀の哲学者が言った
  A P00R AUTHOR’S PUDDING
  チャンプの食べかた
 食事の場面
  ラ・マンチャの二人の男
  ミスター・ロビンソン
  ダルタニャンと仲間たち
  孤独な散歩者の食事
  少年と蟹
  ソバケーヴィチの話
  まことに愛すべきわれらの人生
  ああ、ポンス
  水車場の少女の「いいえ」
  ハックルベリー・フィン風魔女パイ
  働かざるもの食うべからず
  ぼくの祖母はいい人だった
  こうして百年の時代が去った
  アレクシス・ゾルバのスープ

『心の中にもっている問題』
  夏の物語——野球——
  キャベツのための祈り
  ライ麦の話
  世界で一番おいしいパンケーキ
  タンポポのサラダのつくり方
  それはどこにあるか
  アンナおばさんの思い出
  ヨアヒムさんの学校
  パブロおじさんのこと
  カミングスさんの日曜日
  グレインさんの古い詩集
  ジャズマン
  ゴルギアスの歌
  砂時計の砂の音
  失くしたもの 1
  失くしたもの 2
  失くしたもの 3
  一年の365分の1
  ねむりのもりのはなし
  静かな日

『詩の絵本』
  森の絵本
  ジャーニー
  最初の質問

『世界は一冊の本』
  誰でもない人
  人生の短さとゆたかさ
  立ちどまる
  ことば
  ファーブルさん
  なあ、そうだろう
  友人の死
  役者の死
  青函連絡船
  詩人の死
  無名の死
  父の死
  母を見送る
  黙せるもののための
  十二人のスペイン人
  嘘でしょう、イソップさん
  五右衛門
  世界は一冊の本

『黙されたことば』
  はじめに……
  樹、日の光り、けものたち
  聴くこと
  まだ失われていないもの
 黙されたことば
  音楽
  トロイメライ
  エレジー
  世界が終わるまえに
  短い人生
  自由のほかに
  ポロネーズ
  樫の木のように
  イタリアの人
  一番難しい生き方
  ボヘミアの空の下
  幻のオペラ
  ひろがりのなかへ
  われわれの隣人
  聖なる愚者
  牧神の問い
  怒りと悲しみ
  無言歌
  人生のオルガン
  ファンタジー
  ワーグナーの場合
  冬の光り
  ニューイングランドの人
  イン・メモリアム
  そうでなければならない
  森の中で
  ファイア・カンタータ

『記憶のつくリ方』
  むかし、遠いところに
  I
  鬼
  夜の火
  明るい闇
  路地の奥
  肩車
  最初の友人
  風邪
  鳥
  ジャングル・ジム
  II
  少女と指
  橋をわたる
  階段
  海を見に
  竹の音
  おにぎり
  神島
  ルクセンプルクのコーヒー茶碗
  自分の時間へ
  III
  悪魔のティティヴィルス
  謎の言葉
  プラハの小さなカラス
  雨の歌
  みずからはげます人

『一日の終わりの詩集』
 いま、ここに在ること
  人生の材料
  記憶
  深切
  愛する
  間違い
  言葉
  魂は
  経歴
  老年
  惜別
  微笑だけ
  哀歌
  自由に必要なものは
  空の下
  穏やかな日
 マイ・オールドメン
  緑雨のふふん
  露伴先生いわく
  鷗外とサフラン
  二葉亭いわく
  頓首漱石
 一日の終わりの詩
  午後の透明さについて
  朱鷺
  新聞を読む人
  意味と無意味
  Passing By

『死者の贈り物』
  渚を遠ざかってゆく人
  こんな静かな夜
  秘密
  イツカ、向コウデ
  三匹の死んだ猫
  魂というものがあるなら
  草稿のままの人生
  老人と猫と本のために
  小さな神
  サルビアを焚く
  箱の中の大事なもの
  ノーウェア、ノーウェア
  その人のように
  あなたのような彼の肖像
  わたし(たち)にとって大切なもの
  あらゆるものを忘れてゆく
  砂漠の夕べの祈り
  砂漠の夜の祈り
  夜の森の道
  アメイジング・ツリー

『人はかつて樹だった』
  I
  世界の最初の一日
  森のなかの出来事
  遠くからの声
  森をでて、どこへ
  むかし、私たちは
  空と土のあいだで
  樹の伝記
  草が語ったこと
  海辺にて
  立ちつくす
  II
  春のはじまる日
  地球という星の上で
  緑の子ども
  あらしの海
  For The Good Times
  秋、洛北で
  メメント・モリ
  カタカナの練習
  見晴らしのいい場所
  Nothing
  私たちは一人ではない

『幸いなるかな本を読む人』
  檸檬をもっていた老人
  もう行かなければならない
  大きな欅の木の下で
  サイレント・ストーリー
  哀歌
  この世の初めから
  21世紀へようこそ
  そのように、人は
  門を開けろ、シムシム!
  バビロンの少年
  終わりのない物語
  幼年時代の二冊の本
  魂とはなんだ?
  失われた石の顔
  読みさしのモンテーニュ
  水の中のわたし
  わたしたちの不幸のすべて
  深林人知ラズ
  少女はブランコを漕ぐ
  カフカの日記より
  人生に一本の薔薇を
  あなたのゴーゴリ
  大いなる空のひろがり
  かつ消え、かつ結びて
  哲学の慰め

『世界はうつくしいと』
  窓のある物語
  机のまえの時間
  なくてはならないもの
  世界はうつくしいと
  人生の午後のある日
  みんな、どこへいったか
  大いなる、小さなものについて
  フリードリヒの一枚の絵
  二〇〇四年冬の、或る午後
  シェーカー・ロッキング・チェア
  あるアメリカの建築家の肖像
  ゆっくりと老いてゆく
  カシコイモノヨ、教えてください
  モーツァルトを聴きながら
  聴くという一つの動詞
  蔵書を整理する
  大丈夫、とスピノザは言う
  We must love one another or die
  クロッカスの季節
  一日の静、百年の忙
  人の一日に必要なもの
  こういう人がいた
  冬の夜の藍の空
  早春、カササギの国で
  花たちと話す方法
  雪の季節が近づくと
  グレン・グールドの9分32秒

『詩ふたつ』
  花を持って、会いにゆく
  人生は森のなかの一日

『詩の樹の下で』
  洞のある木
  山路の木
  寂寞の木
  秘密の木
  懐かしい死者の木
  手紙の木
  奥つ城の木
  切り株の木
  森の奥の樟の木
  しののめの木
  静かな木
  水辺の木
  石垣の木
  独り立つ木
  少女の髪の木
  雪の雑木林
  ブランコの木
  彼方の木
  モディリアーニの木
  啓示の木
 樹の絵
  カロの樹
  コンスタブルの樹
  フリードリヒの樹
  セザンヌの樹
  クリムトの樹
  オキーフの樹
  『ゴドー』の樹
  落ち葉の木
  寓話の樹
  空との距離

  冬の日、樹の下で
  うつくしい夕暮れの空と樹
  プリピャチの木
  大きな影の木
  人はじぶんの名を
  朝の浜辺で
  夜と空と雲と蛙
  老人の木と小さな神
  虹の木

『奇跡—ミラクル—』
  幼い子は微笑む
 ベルリン詩篇
  ベルリンはささやいた
  ベルリンのベンヤミン広場にて
  ベルリンの本のない図書館
  ベルリンの死者の丘で

  夏の午後、ことばについて
  夕暮れのうつくしい季節
  花の名を教えてくれた人
  空色の街を歩く
  未来はどこにあるか
  涙の日 レクイエム
  この世の間違い
  人の権利
  おやすみなさい
  猫のボブ
  幸福の感覚
  晴れた日の朝の二時間
  金色の二枚の落ち葉
  Home Sweet Home
  北緯50度線の林檎酒
  ロシアの森の絵
  徒然草と白アスパラガス
  ときどきハイネのことばを思いだす
  ウィーン、旧市街の小路にて
  the most precious thing
  賀茂川の葵橋の上で
  良寛さんと桃の花と夜の粥
  いちばん静かな秋
  月精寺の森の道
  奇跡—ミラクル—

書評情報

蜂飼耳(詩人・作家)
朝日新聞2015年5月24日(日)
(響)(記者)
赤旗「朝の風」2015年6月10日(水)
平田俊子(詩人)
福島民友2015年6月14日(日)
瀬野とし(詩人)
赤旗2015年6月14日(日)
野村喜和夫(詩人)
公明新聞2015年6月22日(月)
渡辺創(記者)
北海道新聞「哀惜」2015年6月27日(土)夕刊
松山巌(評論家・作家)
読売新聞2015年7月5日(日)
八木忠栄(詩人)
映画芸術452(2015年夏号)
池井昌樹(詩人)
北海道新聞2015年8月2日(日)
渡辺創(記者)
北海道新聞「海風」欄2015年8月21日(金)
高野ムツオ(俳人)
読売新聞「戦後70年 今年はこの本」2015年12月27日(日)

関連リンク

本書以後の最晩年に書かれた詩が、『最後の詩集』に

「『長田弘全詩集』は、「全・詩集」として編まれた。新編修による二冊の完成版(definitive edition)をふくめて、これまで公刊された十八冊の詩集を収める。いわゆる「全詩・集」とは異なって、未刊の詩集、エピグラム、これまで未収録の詩篇、はぶかれた詩篇、子どもたちへの詩篇、詩文集、選詩集などは収めない」
(本書の巻末「編集について」)

著者自身がこう書かれたように、『長田弘全詩集』の編集時点で未刊だった詩は、ここには含まれていません。本書『長田弘全詩集』以後の最晩年に書かれた詩が、『最後の詩集』に収められています。