みすず書房

「いや、おそらくミーシャだけじゃない。私が知らないだけで世界中にそんな猟師がたくさんいる。いま、目の前でカリブーをバラすミーシャがその証拠だ。
猟師だけにとどまらない。木こり、漁師、遊牧民、罠師、なんでもいい。世界中にミーシャがいる。だとすれば——そう考えて静かで深い昂(たかぶ)りがこみあげてきた。だとすれば、まだ人類は信じるに値する。世界は生きるに値する。この世はとんでもなく面白い」

登山家ハットリ・ブンショウの、サバイバル・シリーズ第3弾! 鮮烈なデビューから10年、釣りも鉄砲もすっかり板についてきた。サバイバル登山は円熟に向かいつつある。夏の南アルプスでの墜落事故。その現場への再訪と再起。より深い狩猟登山をめざして晩秋の北海道へ。そして、隕石湖に生息する新種の岩魚を求めて、1ヵ月におよぶロシア極東北極圏縦断の旅へ。広大なフィールドで展開される圧巻のサバイバル・ノンフィクション。

[本書は、第5回「梅棹忠夫 山と探検文学賞」を受賞しました]

目次

第一部 サバイバル・ニッポン

第一章 獲物の山
獲物と登山/射撃への不信/最後の一発/獲物哲学

第二章 黄泉の山
その1 墜落/下山  その2 炎の倒錯感

第三章 秘密の山
小さなアクシデント/孤立無援ということ

第四章 試みの山
その1 サバイバル登山「秋」/19年ぶりの海別岳
その2 牡鹿と鹿笛/ペテガリ岳へ

第五章 西国の山
冬のサバイバル登山、四国/雪のなかへ

第二部 ツンドラ・サバイバル

その1 ツンドラへの道
新種の岩魚/突然の出発/ペベック
出逢い/大きなキャンプのスウェタ/ツンドラの仕事

その2 ツンドラ徒歩旅行
理想の山旅/ウガトキン川最狭部/待ち伏せ/世界は信じるに値する
グリーンピースピープル/トナカイの呼び名/ノーGPS/峠を越えて

その3 隕石湖エル・ギギトギン
アレキサンダー/湖の釣り/パンク/幻の岩魚

隕石湖エル・ギギトギン以降もしくはすこし長いあとがき

書評情報

北海道立北方民族博物館友の会
Arctic Circle2015年冬号