みすず書房

学校も、住宅も、オフィスビルも、四角い箱でなくてもいい。子どもたちにはやわらかい部屋を、おばあちゃんには土壁の住まいを。人々の暮らしに応じてつくられた空間はおのずと有機的な形をもち、私たちに親しく語りかける。
「象設計集団」の創設メンバーとして、小学校、中学校、保育園、老人ホーム、住宅、公民館、庁舎、美術館、温泉施設、遊歩道、公園など、地域に根ざした多様な空間を生み出しつづける著者が、共同性の思想とみずからの建築設計のプロセスをはじめて語る。人も、風も、光も、木も、鳥も、ともに呼び込む、よろこびあふれる建築論。

目次

「小さな建築」とは

第1章 子どもたちへのプレゼント
学校は暮らしの場
裸足の学校  笠原小学校
屋上夢たんぼ  矢野南小学校
板の中庭、土の中庭  多治見中学校
やわらかい部屋  うらら保育園
道はみんなの長い部屋  用賀プロムナード

第2章 老いと住まい
楽しく暮らす
美的百姓の家  老後の生き方を一緒に考える
小さな舟  86歳の画家の家
仲間と一つ屋根の下  森コレクティブハウス
おばあちゃんが美しい  特別養護老人ホーム 葛飾の家・武蔵野の家

第3章 公共建築は誰のために
象の七つの原則
自然の風は気持ちいい  今帰仁村中央公民館・名護市庁舎
世界にひとつしかない公民館  進修館
同じ街とずっとつきあう  宮代町
野山の空気を吸い込む  由布院美術館
風景の中のお皿たち  古九谷の杜親水公園・九谷焼美術館
裸の建築  かんなべ湯の森「ゆとろぎ」・直入町長湯「御前湯」
歴史と出会う場所  女たちの戦争と平和資料館

第4章 育った家のこと
私の原風景
戦前の記憶が息づく家  高田馬場の家
疎開と農村の暮らし  原道村の家
和洋折衷の家  阿佐ヶ谷の家
両親のこと  軍医だった父、大使になった母
よく遊びよく学び  少女時代の夢
ピアノの師・藤田晴子先生  映画『シロタ家の20世紀』を制作

第5章 建築家への道のり
道はひとつではない
初めての女子学生  東大工学部建築学科へ
60年安保とグランドピアノの家  刺激的な同級生たち
大理石と虎の皮  オリンピック施設の案を出す
丹下健三先生から学んだこと  空間の秩序
吉阪隆正先生から学んだこと  外も内も同じ密度で考える

第6章 協働設計は楽しい
頭脳がひとつでは、豊かな建築は生まれない
一本の線を共有する  象設計集団を設立
「生け贄、トゲトゲ、目玉」   ドーモ・セラカント
引越好きの貧乏事務所  暑くて寒くて、人は増える
建物だけでは完結しない  ランドスケープデザイナーとの協働設計
事務所は廃校の小学校  東京から十勝へ
象設計集団の仲間たち  各地にひろがる「チーム・ズー」
壁の建築・森の建築  U研究室と象設計集団の違い

第7章 街にひらかれた家
家は家族だけのものではない
田園調布の家  三世帯九人が洋館に暮らす
洋館からプレファブ住宅へ  セキスイハイムM1での暮らし
両親の居間を街にひらく  カフェ「えんがわ」
物語を紡ぐ家  ドーモ・アラベスカ
人も風も光も木も鳥もいらっしゃい  ドーモ・キニャーナ

第8章 建築のよろこび
「気持ちのよい建築」から「建築のよろこび」へ
街や建築を体験するよろこび  旅を遊ぶ
建築を伝えるよろこび  暮らしから出てくる「かたち」
建築を創るよろこび  わくわくする建築を

建築オノマトペ

註記
あとがき

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