みすず書房

若い夫婦と三人の子ども、そして愛犬。五人と一匹の家族が、東京郊外の麦畑にかこまれた一軒家で織りなす日々。

春から晩夏にかけての季節の移ろい、ひとりひとりのやわらかな心のひだを、詩情と優しいユーモアにあふれる筆致で綴り、まるで生きる歓びそのものを本のかたちにとじこめたかのような、幸福感に満ちた長編小説。『夕べの雲』の前編にあたる、庄野文学の代表作のひとつである。

「……私はこの母に東京に引越した私たち一家がどんなふうにして暮しているかを知らせるつもりで書いた。それが、『ザボンの花』であったといっていいだろう」——「あとがき」より

目次

第1章 ひばりの子
第2章 よき隣人
第3章 赤い札入れ
第4章 えびがに
第5章 ゴムだん
第6章 音楽会
第7章 こわい顔
第8章 はちみつ
第9章 麦の秋
第10章 やどかり
第11章 星
第12章 アフリカ
第13章 子供の旅行
第14章 映画館
第15章 花火
第16章 夏のおわり
 あとがき