みすず書房

「生れた家のある本郷の団子坂から、谷中、上野桜木町を経て、根岸へ通じるあの辺一帯はたとえどんな道筋でも、横丁でも、私には見覚えのあるものばかりで、もし夢にどこか解らないがよく知っている道が出て来たとしたら、必ずあの辺りと思ってよかった」(本文より)

谷中の千代紙に亡き母の想い出を辿り(いせ辰)、鳥打ち帽で突付くさくら鍋に巴里の下町情緒を偲び(みの家)、煙管つくり一筋五十年の修行話にそっと寄り添う(煙管つくり)。昭和30年代、雑誌『酒』に連載された「のれんのぞき」「お江戸は遠くなりにけり」「ハイカラ風俗史」「江戸の古寺」から名品をセレクト。
「一読してさわやかな名文だと感じ入った。そこには昭和三十年代の風がふき、なんともいえぬ闊達な感じ。そして読む私はいいしれぬ懐旧の情についぼんやりしてしまう」(森まゆみ「解説」)
明治生まれのエッセイの名手と歩く、江戸東京散歩を、ごゆるりとどうぞ。

目次

   のれんのぞき
芋坂の羽二重団子
飯田屋の「どぜう」
さくら鍋「みの家」
天ぷら「天満佐」
福神漬の酒悦
神茂のすじ
柴又の川魚料理「川甚」
江戸前「すし政」

   お江戸は遠くなりにけり
羽子板 押絵作り
人力車
花簪
煙管つくり
川並み
定斎や
櫛の十三や
いせ辰の千代紙
太神楽
寿餅つき
蛇の目・番傘作り
船宿
入谷の朝顔市と浅草観音のほおずき市
尺八を作る人
藤波の小道具

   ハイカラ風俗史
リボンと造花の簪
氷屋の玉のれん
修道院
古風な西洋館
カトリック墓地
長崎かすていら
ハーモニカ
ジンタ
葡萄園

   江戸の古寺
浄閑寺
吉祥寺
麟祥院
禅林寺

解説  森まゆみ

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