みすず書房

食卓作法の起源

神話論理 III

L’ORIGINE DES MANIERES DE TABLE

判型 A5判 タテ210mm×ヨコ148mm
頁数 672頁
定価 9,460円 (本体:8,600円)
ISBN 978-4-622-08153-1
Cコード C1010
発行日 2007年9月21日
備考 現在品切
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食卓作法の起源

〈第I巻の表題となった「生のものと火にかけたもの」の対立は料理の不在と存在との対立であった。第II巻では、われわれは料理の存在を想定したうえでその周辺を探索した。すなわち料理の手前にある蜜と、料理の向こう側に位置するタバコに関する慣習と信仰である。同じ方向にしたがいつつ、この第III巻では料理の輪郭をたどった。すなわち料理の自然の側に位置する消化と、文化の側に位置する調理法から食卓作法までの広がりとである。……食卓作法について言えば、それは調理の仕方に上乗せされた摂取の作法であり、ある意味では二乗された文化的加工とも見なすことができる。〉(本書542ページ)

第I巻のボロロ「鳥の巣あさり」に呼応して、この巻の基準神話に選ばれるのは、アマゾン川源流近くに住むトゥクナ族の、狩人モンマネキの神話である。主人公がカエルや鳥やミミズやインコと結婚しては別れ、際限なく続くかともみえるその物語は、次々に挿話が付加される通俗連載小説に似ていながら、なお明確な感覚的特性の対比によって組み立てられる神話の構造を保持している。神話の構造はどのように劣化し、系列の継起する「歴史」に変容するのか。カヌーに乗って旅する月と太陽の神話とともに舞台は北アメリカに移動し、不均衡とリズム、周期性へと探求は進む。南北アメリカのインディアンの人々が自分たちの生きるこの世界を理解するための、思考の枠組みとしての神話に、いかなるモラルが内在するか。結びの章のペシミスティックな言明を、20世紀後半の激変を知る現代に、いかに読むことができるだろうか。

目次

凡例
記号表


第1部 バラバラにされた女の謎
I 犯罪の現場で
II つきまとう半身

第2部 神話から小説へ
I 季節と日々
II 日々の営み

第3部 カヌーに乗った月と太陽の旅
I 異国的な愛
II 天体の運行

第4部 お手本のような少女たち
I お嬢様であるとき
II ヤマアラシの教え

第5部 オオカミのようにがつがつと
I 困難な選択
II マンダン風臓物料理

第6部 均衡
I 一〇個組
II 三つの服飾品

第7部 生きる知恵の規則
I 傷つきやすい渡し守
II 料理民族学小論
III 神話のモラル

訳者あとがき(渡辺公三)
文献
神話索引
総合索引

『神話論理』全5冊のご案内

『裸の人』2の刊行をもちまして、レヴィ=ストロース『神話論理』は邦訳全5冊が完結いたしました。原著刊行から四十年越しのシリーズ完結です。
フランス語版第 I 巻の出版は1964年、みすず書房はその二年後に日本語版版権を取得し、『野生の思考』(1976年)の名訳で知られる故・大橋保夫先生に、『野生の思考』の次に翻訳をお願いする予定だったときいています。構造主義が日本に本格的に紹介されつつあった当時、訳者は大橋先生をおいて考えられませんでした。
大冊のため共訳のチームが組まれ、じっさいに『野生の思考』の直後から翻訳が始まりました。しかし原著者の文章をつかみとる困難に加えて、訳語や文体をめぐる訳者間相互の厖大な調整、その上に諸事情も重なって、ようやく大橋訳「序曲」が月刊『みすず』に掲載されたのが1992年初頭のことでした(『みすず』1992年1月号・2月号に分載)。
全巻の翻訳態勢を見直し再スタートという矢先に、大橋先生は急逝なさいましたが(1998年)、動き出したプロジェクトは巨大な車輪が少しずつ回るように前進しました。第 I 巻・第 II 巻を単独訳された早水洋太郎先生は、大橋保夫先生門下です。第 III 巻と第 IV 巻1・2では、吉田禎吾先生・渡辺公三先生・木村秀雄先生を中心とする共訳になっていることはごらんのとおりです。それにしてもさらに年月がかかったのは、総力を結集して翻訳にのぞんでも、生い茂る神話の森の奥深くまでレヴィ=ストロースの踏み跡を見通すのはとてもむずかしいことだったからです。

著者レヴィ=ストロースの生前に日本語版をお目にかけられなかったのが悔やまれますが、これまで長いあいだお待ちいただき、さまざまに支えてきていただきました読者のみなさま、関係者のみなさま、本当にありがとうございました。 感謝申し上げます。(2010年2月)

編集者からひとこと

『神話論理』の既刊三冊を読む順番について、著者レヴィ=ストロースが端的に、またていねいに、つぎのように説明しています。
「三巻のうちの第三巻から読み始め、その後に第三巻の終わりの部分と連接する内容から始まる第一巻に読み進めるということも何ら避けるべきことではない。そのうえで興味が持続していれば第二巻を読めばよい。同様に第二巻から始めて第一巻に進み、第三巻を読むということもできよう。じっさいのところ、1, 2, 3 ; 2, 3, 1 ; 2, 1, 3 ; 3, 1, 2という順序のいく通りかの読み方がある。ただ、1, 3, 2 ; 3, 2, 1という順序は、おそらく読者にはわずらわしいものとなる恐れがある」……(本書「序」4ページ)

たまたまこの第III巻から先に手にとられた方は、ですからどうぞためらわずお読み始め下さい。著者自身、シリーズ中もっとも気に入っておられる巻のようでもあります(渡辺公三・木村秀雄編『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』所収のインタヴュー。ただし「もっとも成功した巻」と水を向けた聞き手に向かって、「もっともひどくないというべきですが」とレヴィ=ストロース氏はすぐさま訂正を加えられているのですが)。