みすず書房

「1940年代から60年代という時期に、失語論というヨーロッパで生まれ育った領域において、「語義失語」という日本を発祥の地とする秀逸な失語像が提起され、展開されていったことは、驚くべきことであった」(大東祥孝「解説」より)

ドイツのウェルニッケ、フランスのブローカをはじめ、失語症をめぐる論議が精神医学史上に姿を現わしたのは、19世紀後半の欧州においてであった。漢字・仮名という独特の表現形式を持つわが国において失語研究が活発になるのは、20世紀に入ってからである。
失語研究の黎明期といえる1943年、著者が発表した日本語特有の失語様式である「語義失語」概念は、まさしく“日本人による日本人のための失語論”の始まりを告げるものだった。
本書には「語義失語」概念を発表した記念碑的論文「失語——日本語における特性」他、失語研究の歴史、多種多様な失語の様式とその病理学を詳説した重要論文4編を採録。

目次

失語症
失語——日本語における特性
失語の意味型——類義失語について
文の失読について

解説(大東祥孝)
初出一覧

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