世界における索引と徴候
中井久夫集3 1987-1991
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 352頁 |
定価 | 3,520円 (本体:3,200円) |
ISBN | 978-4-622-08573-7 |
Cコード | C0311 |
発行日 | 2017年7月10日 |
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 352頁 |
定価 | 3,520円 (本体:3,200円) |
ISBN | 978-4-622-08573-7 |
Cコード | C0311 |
発行日 | 2017年7月10日 |
明仁天皇は、「ありがたみ」を求める人には影の薄い天皇に見えるかもしれないが、それは明仁天皇のほうで願い下げにしたい「ひいきの引き倒し」である。実際には強い意見の人man of strong opinionであり、しかも自己の影響力と、さらに重要なことに、この特性と限界とを自覚し、するどい質問の形で自己の見解を表明すると明言し、その指向するところ、社会の主流に対して、その「副作用」を警告し、これを滅殺することを自己の使命と規定しておられると思う。実際、発展developmentに生存survivalより高い優先順位を置いてきた戦後の日本に対して、機会あるごとに牽制球を投げ、また、戦争の後遺症を癒す努力を自己に課しておられると私は思う。
(「「昭和」を送る」 1989)
「死なないためにだ。俺は、死なないためにやっているのだ。芸術?そんなのんきなものじゃない」。私は、私の患者たちが描く、時として哀切な美しい画を思った。治癒するとみな平凡な画になる。しかし、才能が涸渇するのではない、必要がなくなるのだ。私の患者たちも「死なないために」やっているのだ。名古屋弁でいえば「必死こいて」——。
(「荒川修作との一夜」 1990)
第3巻には、多様な分野をテーマに精神科以外の読者を獲得していた時期の文章、長短26編を収録。
意地の場について
治療にみる意地
医療における合意と強制
心に働くくすりは信頼関係があってこそ効く
青木義作先生
桜は何の象徴か
私の仕事始め——ウイルス学の徒弟時代
引き返せない道——冷戦最終期の予想
統合失調症の精神療法——個人的な回顧と展望
「昭和」を送る——ひととしての昭和天皇
微視的群れ論
R・D・レインの死
荒川修作との一夜
世界における索引と徴候
「世界における索引と徴候」について
ささやかな中国文化体験
「頑張れ」と「グッドラック」
サリヴァンの統合失調症論
一つの日本語観——連歌論の序章として
戦後に勇気づけられたこと
ロシア人
見えない病気の見えない苦労
待つ文化、待たせる文化
花と時刻表
私と現代ギリシャ文学
家族の深淵——往診で垣間見たもの
解説3 最相葉月
掲載文・書誌一覧