みすず書房

サルは大西洋を渡った 電子書籍あり

奇跡的な航海が生んだ進化史

THE MONKEY’S VOYAGE

判型 四六判
頁数 480頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-08649-9
Cコード C0040
発行日 2017年11月10日
電子書籍配信開始日 2018年2月5日
オンラインで購入
電子書籍を購入 *価格は各電子書店でご確認ください
サルは大西洋を渡った

「ありそうもない、稀有な、不可思議な、奇跡的な」ルーツこそが本物だった。植物や、翅のない昆虫、塩水に弱い両生類やサルなど、“海越えができない”はずの生きものたちが、大海原を渡って分布を広げた歴史が明らかになりつつある。
地理的な障壁によって生物の分布域が分断されてきたとする「分断分布」偏重のパラダイムに、変革が起き始めていると著者は指摘する。新たに浮上してきたのは、動植物があちらの陸塊からこちらの陸塊へと奇跡の航海を遂げた、躍動感とサプライズに満ちた自然史である。
歴史生物地理学の世界を覗き込めば、多彩な生きものたちの姿はもちろん、プレートテクトニクスや気候変動、化石記録に分子時計といった幅広い知見がひしめき合っている。個性豊かな研究者たちが、生物の来歴をめぐって激しく論争した経緯も、本書は臨場感たっぷりに映しとっている。
 第III部では、読み進むにつれてますます「ありそうもない度合い」の高い海越えの事例が登場するので、その頂点までどうかお見逃しなく。それらはいずれも、著者が最後に語る「私たちの世界は、なぜ今このような姿をしているのか?」という大きな描像の大切なピースなのだ。

目次

序──ガータースネークとゴンドワナ大陸
コラム 生物地理学の用語と概念あれこれ

I 地球と生命
第1章 ノアの方舟からニューヨークまで──物語の起源
第2章 分断された世界
第3章 無理が通れば道理が引っ込む
第4章 ニュージーランドをめぐる動揺

II 進化樹と時間
第5章 DNAがもたらした衝撃
第6章 森を信じよ
コラム 分子時計と極論の落とし穴

III ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと
第7章 緑の網の目
第8章 あるカエルの物語
第9章 サルの航海
コラム 恐竜も?
第10章 ゴンドワナ大陸由来の島々の長い不思議な歴史

IV 転換
第11章 生物地理学「革命」の構造
第12章 奇跡に形作られた世界

エピローグ──流木の海岸

謝辞
訳者あとがき

参考文献
原註
索引

書評情報

長谷川眞理子(総合研究大学院大学学長)
日本経済新聞2017年12月17日(日)
渡辺政隆(筑波大学教授)
信濃毎日新聞2017年12月24日(日)