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兵士というもの

ドイツ兵捕虜盗聴記録に見る戦争の心理

SOLDATEN

Protokolle vom Kämpfen, Töten und Sterben


英米軍はドイツ兵捕虜同士の赤裸々な会話を盗聴し、膨大な記録を残した。この画期的史料を歴史学と心理学で分析し兵士の本質に迫る。

第二次世界大戦中の英米軍は捕虜にしたドイツ兵の収容所に盗聴器を仕掛け、詳細な記録をとっていた。その総量は付随資料を含むと15万ページに及ぶ(記録の概説は「補遺」に記載)。
兵士から見た戦争については従来、調書、家族への手紙、回想録などが利用されてきたが、自己を正当化したり後づけの知識で補正されるなど、史料として多くの限界を抱えていた。しかし、盗聴されていることを知らない捕虜同士の会話は赤裸々で、ドイツ国防軍のみならず軍隊一般の心性史に新しい視座を拓く可能性を持っていた。
戦後も保存され1996年に機密解除されながら、書架に埋もれていたそれを発見した歴史家ナイツェルは、史料としての性格を看破し、社会心理学者ヴェルツァーに協力を求めた。人々の内面に触れるこうした史料の可能性を汲み尽くすには、心理学の知見が欠かせない。本書はこうして成った共同研究の成果である。
分析にあたって本書は、個人の行動主体性よりも「参照枠組み」という集合的概念を重視している。たとえば顕彰は象徴的だ。ドイツは詳細な顕彰システムを導入していたが、兵士の受章への願望は驚くほど大きく、行動を規定する要因として働いた。
兵士から見た戦争、第三帝国、そして兵士自身の世界を構成する暴力、破壊、戦争犯罪、感情、セックス、技術、総統信仰、イデオロギー、勝利への信念――。戦争というもの、兵士というものを理解するために、盗聴記録から読みとれることは何か。本書の結論は、ときとして予期しないようなものとなるかもしれないが、我々の理解を核心に向けて一段深めてくれるだろう。


目次


プロローグ

第1章 戦争を兵士たちの視線から見る――参照枠組みの分析
基礎的な方向づけ――ここではいったい何が起きているのか
文化的な拘束
知らないということ
予期
認識における時代特有の文脈
役割モデルと役割責任
「戦争は戦争だ」という解釈規範
形式的義務
社会的責務
さまざまな状況
個人的性格

第2章 兵士の世界
「第三帝国」の参照枠組み
戦争の参照枠組み

第3章 戦う、殺す、そして死ぬ
撃つ
自己目的化した暴力
冒険譚
破壊の美学
楽しさ
狩り
撃沈する
戦争犯罪――占領者としての殺害
捕虜にたいする犯罪
絶滅
絶滅の参照枠組み
射殺に加わる
憤激
まともであること

感情
セックス
技術
勝利への信念
総統信仰
イデオロギー
軍事的諸価値
イタリア兵と日本兵
武装SS
まとめ――戦争の参照枠組み

第4章 国防軍の戦争はどの程度ナチ的だったのか

補遺
謝辞/訳者あとがき/原註/文献/索引


著訳者略歴

ゼンケ・ナイツェル
Sönke Neitzel

1968年生まれ。グラスゴー大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを経て、現在ポツダム大学教授。専門は軍事史。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
ハラルト・ヴェルツァー
Harald Welzer

1958年生まれ。フレンスブルク・ヨーロッパ大学客員教授。社会心理学者・社会学者。膨大な著作・編著があり研究テーマも多岐にわたるが、中心テーマは暴力と記憶。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
小野寺拓也
おのでら・たくや

1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。昭和女子大学人間文化学部を経て、現在、東京外国語大学世界言語社会教育センター特任講師。専門はドイツ現代史。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

保坂正康(ノンフィクション作家)
<朝日新聞 2018年6月30日(土)>

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「兵士というもの」の画像:

兵士というもの

「兵士というもの」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/480頁
定価 6,264円(本体5,800円)
ISBN 978-4-622-08679-6 C1022
2018年4月16日発行

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