免疫の科学論
偶然性と複雑性のゲーム
LE JEU DU HASARD ET DE LA COMPLEXITÉ
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 416頁 |
定価 | 5,280円 (本体:4,800円) |
ISBN | 978-4-622-08693-2 |
Cコード | C0045 |
発行日 | 2018年6月18日 |
LE JEU DU HASARD ET DE LA COMPLEXITÉ
判型 | 四六判 |
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頁数 | 416頁 |
定価 | 5,280円 (本体:4,800円) |
ISBN | 978-4-622-08693-2 |
Cコード | C0045 |
発行日 | 2018年6月18日 |
[書評]大野秀樹「免疫学は神経科学を凌駕した」
免疫は細菌からヒトまでほぼあらゆる生物に具わり、病原体や、がんなどの内部異常に休みなく対処している。日常的に「免疫力アップ」が話題にのぼり、がんの免疫療法も普及しつつあるが、免疫はとらえがたい。特定の臓器に収まるのではなく、全身に広く深く組み込まれ、集合と離散をくり返す。実体というよりも偶然が織りなす複雑性の連鎖のようだ。免疫はよく「異物を排除する」と言われるが、実際はそれほど単純ではない。異物を敢えて完全に排除しないことで効果を発揮する場合もある。自己と非自己の境界も曖昧だ。知れば知るほど免疫の謎は深まり、だから面白い。
本書はこれまでの免疫の本とは、かなり異なる。主題はヒトの生体防御だが、第I部で免疫を進化の文脈で大きくとらえ、その働きを工学の用語である「ロバストネス」によって概念化する。第II部ではその装置を「モジュール」に分け、構造とつながりを分析的に調べてゆく。そして第III部で、ヒト免疫系の全体像を描き出す。さらに本書全体に、既存の思考枠組みを揺さぶる警句があふれている。
「自然免疫と獲得免疫は混じり合っている」「特異性の低い反応の組み合わせが、高度に特異的な認識に導く」「自己と非自己の識別は、メカニズムの多数性の産物でしかありえない」「全体の動態だけが最適化を達成することができる」「免疫系はじつは、海面に見える生理学的氷山の一角にすぎない」
打ちひしがれるほど精巧で複雑な免疫の全体像に迫るには、仕組みの理解にとどまってはならない。フランスの学問的伝統が最良のかたちで活きた、新しい免疫の学。
まえがき
はじめに
第 I 部 進化における生体防御
第1章 進化における捕食生物と獲物
第2章 系統樹の下部にある自然防御
第3章 断絶——獲得免疫
第4章 進化における獲得免疫
第5章 生物の複雑性とその進化
第6章 生体防御とロバストネス
第 II 部 ヒト生体防御の組織——部分が全体に向かう
第7章 分子と分子モジュール
第8章 分子モジュールの連鎖
第9章 細胞と細胞モジュールの構造
第10章 防御反応における機能モジュールのつながり
第11章 必然だが起こりそうもない出合い
第12章 より個別化された医療へ
第 III 部 ヒト生体防御の全体
第13章 監視機能
第14章 病原体に対する防御
第15章 内的混乱と生体防御
第16章 全体的な特質と機能
第17章 生体に包含される防御
第18章 自己と非自己の識別
第19章 生物の論理
おわりに
訳者あとがき
原注
用語解説
索引