みすず書房
近刊

現代日本法へのカタバシス 新版【新装版】

判型 A5判
頁数 320頁
定価 8,580円 (本体:7,800円)
ISBN 978-4-622-09815-7
Cコード C1032
発行予定日 2025年9月16日予定
オンラインで購入
現代日本法へのカタバシス 新版【新装版】

ナポリの小さな古本屋で入手した粗末なラテン語の書物、それは1580年のナポリから2001年の東京へタイムトリップした人文主義者の綴る書簡集? ――異色の表題作が甦る。しかもこのたび、民事法にくっきり主題を絞る本として生まれ変わった。新たに組合論(単行本未収)、委任論(書き下ろし)を収め、補足的論考「債権法改正の結末」(書き下ろし)を加えるほか、旧「『ローマ法案内』補遺」は全面改稿されて「日本の民事法が抱える問題」となる。

ゆるがぬ基本は〈個人の自由〉。自由な個人と個人とが、互いに相手に全幅の信頼を置き、善意に基づき経済活動を行う社会。裏切らない、隠さない、寄りかからない、手を抜かないで、それぞれが自由に自己の利益を追求する。この澄みきった展望をもたらすのは、主著三部作で総2700頁余をかけ究明された〈占有〉概念である。著者の高度なローマ法研究はつねに今日を鋭く照射するが、敢えて「専門の外に出」て、本書で降り立つ(カタバシス)先は、現代日本の経済と社会の混乱の坩堝。
なぜなら、「民事法こそは法のコア」(はしがき)。法学教育への深い思いと、将来の若い世代によせる明るい期待が、全篇の底を流れる。

(新版初版2018年10月1日発行)

  • このたび並製(ソフトカバー)にて新装復刊いたします。内容は変わりません

目次

はしがき

1 現代日本法へのカタバシス
1 ナポリの怪しい小さな古本屋
2 「都市」の構造と公法の基礎;その1
3 「都市」の構造と公法の基礎;その2
4 自由;その1
5 自由;その2
6 占有;その1
7 占有;その2
8 消費貸借
9 錯誤
10 代理
11 請負・法人
12 出口

2 「客殺し」のインヴォルティーノ、ロマニスト風

3 占有概念の現代的意義

4 「債権法改正の基本方針」に対するロマニスト・リヴュー、速報版

5 債権法改正の結末
0 序
1 全般
2 契約法の層の復元
3 法律行為
4 契約責任
5 債権総論
6 契約各論

6 東京地判平成25年4月25日(LEX/DB 25512381)について、遙かPlautusの劇中より
0 序
1 事案、およびその問題点
2 背景に存する問題
3 Plautusの劇中より
4 societas原型
5 変化の兆候
6 領域降下
7 本件契約を修正する
8 かりそめの概観

7 現代日本取引社会における委任不全
0 序
1 問題の所在、または委任の制度的存在意義
2 物的担保への固執
3 信用の閉鎖
4 エイジェントたちの狂宴
5 プリンシパルの受難
6 「倒産隔離」の問題
7 委任型信用が成り立たない理由

8 日本の民事法が抱える問題
0
1 占有
2 bona fides
3 所有権
4 民事責任法
5 locatio conductio
6 法人
7 民事訴訟
8 執行法

索引

初出一覧

1  『法学教室』259-270号、2002-2003年(旧版にも収録、写真省く)
2  西川洋一他編『罪と罰の法文化史』東京大学出版会、1995年(旧版にも収録)
3  『民法の争点』ジュリスト』増刊、有斐閣、2007年(旧版にも収録)
4  『東京大学法科大学院ローレビュー』5巻、2010年(旧版にも収録)
5  (書き下ろし)
6  『東京大学法科大学院ローレビュー』10巻、2015年(若干修正)
7  (書き下ろし)
8  旧版の「『ローマ法案内』補遺」を全面的に書き改めた

書評情報

加藤陽子(東京大学教授)
毎日新聞(木庭顕『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)書評中に言及)2018年10月14日(日)

関連リンク

「民事法こそは法のコア」(はしがき)

本書に収める論考からほんの一節ずつご紹介(WEBみすずサイト「新刊紹介」)