みすず書房

アントフィナンシャル 電子書籍あり

1匹のアリがつくる新金融エコシステム

蚂蚁金服

判型 四六判
頁数 400頁
定価 3,520円 (本体:3,200円)
ISBN 978-4-622-08775-5
Cコード C0033
発行日 2019年1月24日
電子書籍配信開始日 2019年2月14日
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アントフィナンシャル

急速にキャッシュレス化が進む中国。

9億人以上が利用する決済サービス「アリペイ」(支付宝)。
1元から資産運用ができるMMF「余額宝」。
個人や企業の信用度をスコアリングする「芝麻信用」(ジーマ信用)。
一般消費者や零細企業に少額融資を行う、マイクロクレジット専門のインターネット銀行「網商銀行」(マイバンク)。
これらすべてを動かすのが、アリババ・グループの金融関連会社「アントフィナンシャル」だ。

現在、アントフィナンシャルの業務分野は、決済、融資、資産運用、保険、銀行に及び、テクノロジーによって金融のあり方を大きく変えようとしている。
本書では、中国の金融シンクタンク「中国金融40人論壇」(CF40)のメンバーが、2004年の「アリペイ」の誕生から2017年までのアントフィナンシャルの発展史を辿り、その全貌を解明する。

アントフィナンシャルが最も重視するのは零細企業や農村、一般消費者へのサービスだ。
資金ニーズはあるものの、信用情報がなく、銀行から融資を受けられない人々には、有効な信用情報を蓄積する術を生み出し、適正に与信判断を行うシステムを構築することで融資を実現した(第5章で詳述)。
貸付リスクの高さから既存金融機関に見放されてきた農村部でも、実情に即して金融ニーズを腑分けし、インフラを整備して、都市部と同等のサービスを提供しようとしている(第8章で詳述)。

この企業の本質は、取引における「信用」の問題を技術力で解決することにある。
さらに、その技術を積極的に外部に開放することで、独自の金融エコシステムを世界へ拡げようとしている。

KPMG/H2 Venturesが選出する「Fintech100」に3年連続で第1位に選ばれた、世界的フィンテック企業の全貌を解明。
金融の最前線を知り、中国の現在を知るための必読書。
巻頭「序文」を一部公開
巻末「解説」も公開(PDF、739KB)

目次

アントフィナンシャル年表/業務分野および基盤構造
序文 「アントフィナンシャルは生きた金融の発展史である」  黄益平(北京大学デジタル金融研究センター主任)

はじめに

第I部 ゲームチェンジャー・アリペイ
第1章 アリペイの誕生
1 誕生
2 開拓
3 成長の痛み
4 法制度への対応
5 イノベーション——「双11」の裏で

第2章 アリペイの野心──キャッシュレス社会の推進
1 オールイン・モバイル——モバイルにすべてを賭ける
2 QRコード決済の先駆者
3 モバイル決済頂上決戦——アリペイvsウィーチャットペイ
4 モバイル決済は「決済」だけじゃない

第II部 アリが夢見るインクルーシブファイナンス
第3章 余額宝がもたらす資産運用革命
1 余額宝の誕生
2 招財宝は「諸刃の剣」?
3 最終兵器、アントフォーチュン

第4章 インターネット時代の零細企業融資
1 アリババと商業銀行の中小企業融資モデル
2 阿里小貸——インターネットとビッグデータを駆使した零細企業融資
3 網商銀行——クラウド上の銀行

第5章 信用を財産に
1 芝麻信用——個人の信用アカウント
2 〈信用=財産〉時代の到来
3 中国の信用システム構築は始まったばかり

第III部 金融の勢力図を塗り替える
第6章 1匹のアリが作る新金融エコシステム
1 アリの前世
2 アリの使命
3 投融資のロジック
4 進撃のアリ

第7章 グローバルな発展の未来図
1 グローバル化の青写真
2 世界規模のインクルーシブファイナンス
3 花といばらのグローバル化の道

第8章 農村金融の荒野を開墾する
1 決済で農村金融の扉をこじ開ける
2 信用貸付を掌握せよ
3 追い風を受ける農村金融

第9章 オープンプラットフォーム──テクノロジーで金融に奉仕する
1 〈インターネット+保険〉の発展性
2 インターネット推進器の進化の道
3 アントフィナンシャルの未来——徹底して「テクノロジー企業」であること

あとがき

解説 「アリの新たな挑戦」  西村友作(対外経済貿易大学国際経済研究院教授)

付録 アントフィナンシャル・サービスグループ役員名簿/株主名簿/投資先一覧