みすず書房

心理学の7つの大罪

真の科学であるために私たちがすべきこと

THE SEVEN DEADLY SINS OF PSYCHOLOGY

判型 四六判
頁数 392頁
定価 4,840円 (本体:4,400円)
ISBN 978-4-622-08788-5
Cコード C1011
発行日 2019年4月1日
オンラインで購入
心理学の7つの大罪

「もしもいま私たちが警告の印を無視してしまったなら、100年以内に、あるいはもっと早く、心理学は古臭い学問趣味の一つと見なされることになるかもしれない。ちょうど私たちがいま錬金術や骨相学をそう見るのと同じように」
STAP細胞問題で衆目を集めたデータの捏造・改竄による不正行為は、心理学にとってもけっして対岸の火事ではない。顕著な有意差のある研究結果への偏重、実験データの私物化、不正行為への脆さ、論文のでたらめな評価尺度……。著者は自らの研究者生活を通じて見えてきた、心理学の研究文化に根づく「7つの大罪」を暴き出す。
悪しき慣習に堪えかねた著者は、国際的学術誌『コーテックス』の編集委員になると、すぐに新たなシステム作りに着手する。研究発表の「事前登録制度」である。本書はその挑戦の軌跡とともに、伝統に固執し、変化に抵抗する研究者たちの姿をも克明に描くものである。
心理学が透明性と再現性を高め、真の科学でありつづけるためには、いま何をすべきか? 改革の旗手が未来への青写真を提示する、警鐘の書にして救済の書。

目次

序文

第1の罪 心理学はバイアスの影響を免れていない
「イエス・マン」小史
目新しさへの偏愛——陽性かつ新たなものは、いつ陰性だが真実のものを打ち負かすのか
実験ではなく、概念を追試する
歴史の改竄
バイアスとの戦い

第2の罪 心理学は分析に密かな柔軟性を含ませている
p値ハッキング
p値の特異なパターン
ゴースト・ハンティング
分析上の無意識的な「調整」
バイアスの影響を受けたデバッギング
心理学研究者は報われることの少ない法律家にすぎない存在なのだろうか
密かな柔軟性の解決法

第3の罪 心理学は自らを欺いている
心理学における非信頼性の原因
理由1 直接的追試の軽視
理由2 検定力の不足
理由3 方法を開示しないこと
理由4 統計的誤り
理由5 論文を撤回をしないこと
非信頼性の解決法

第4の罪 心理学はデータを私物化している
データ共有の大いなる利益
データを共有しないということ
秘かなデータ共有
データを共有しないということがいかに不正行為を隠蔽するか
データ共有を標準とすること
草の根的活動、飴、鞭
ブラックボックスを開け放つ
悪しき慣習の防止

第5の罪 心理学は不正行為を防止できていない
詐欺行為の解剖学
一線を越えるとき
若い世代の科学者たちが道を踏み外すとき
ケイトの物語
悪の12カ条——どうやって詐欺の発覚を免れるか

第6の罪 心理学はオープン・サイエンスに抵抗している
オープン・アクセス出版の基礎
なぜ心理学者は障壁を前提とした出版活動を支持するのか
ハイブリッドOA——解決でもあり、問題でもあるもの
ゲリラ活動の呼びかけ
反対意見
開かれた道のり

第7の罪 心理学はでたらめな数字で評価を行っている
どこへも行き着くことのない道
インパクト・ファクターと現代の占星術
本末転倒
学術的著者権という汚濁
どこかへと行き着く道

救済
「バイアスの影響を受けているという罪」「密かな柔軟性を用いているという罪」の解決法
登録制報告——バイアスに対するワクチン
査読を伴わない事前登録
「自らを欺いているという罪」の解決法
「データを私物化しているという罪」の解決法
「不正行為を防止できていないという罪」の解決法
「オープン・サイエンスに抵抗しているという罪」の解決法
「でたらめな数字で評価を行っているという罪」の解決法
変革のための具体的な歩み
おわりに

訳者あとがき

索引