みすず書房

73歳の冬、サートンは夜中に突然軽い脳梗塞を起こした。さらに、当時つづいていた体調不良に重ねて、愛猫ブランブルの死があり、クリスマスツリーが燃えるハプニングもあり、詩はいっこうに湧いてこない。
そんななかで春を迎えた1986年4月、彼女は「とにかく率直な日記をつけよう」と決める。こうして読者は、サートンがついに元気になるまでの道程を伴走することになる。
日記の終盤にかけて、朗読旅行にも出かけられるようになったサートンの「独り居」は、豊かさと生気をとり戻していく——毎日臨む海、多忙な庭仕事、貪欲な読書、新顔の雄猫ピエロ、気にかけてくれる友人たち、読者からの手紙、そしてふたたび湧きはじめた詩。
サートンの筆致はどんな状態にあっても湿っぽくない。ここにいるのは、どこまでも人生の探検者でありつづける詩人だ。

書評情報

中島悦子(詩人)
北日本新聞、富山新聞、福島民友ほか(共同通信配信)2019年12月14日ほか