2019.10.11
荒川洋治、「打上花火」を語る
荒川洋治『霧中の読書』
メイ・サートン『74歳の日記』 幾島幸子訳
2019.10.10
(訳者は一昨年、かつてサートンが住んでいたニューイングランドの家を訪れた。「訳者あとがき」から、その一部をご紹介したい。)
一昨年の秋、紅葉の時期に一路ボストンへ飛んだ。(中略)ヨークはメイン州の南端に位置し、ボストンから約100キロの道のり。ただ、肝心の住所がわからなかったので家探しは難航した。なんとなくヨークにさえ行けば、それらしい地形がすぐに見つかって……と甘く考えていたのだが、その考えはみごとに裏切られた。ヨークはボストンから近いこともあって夏のリゾート地として有名なところで、海岸こそ広がっているが、海を見下ろす小高い丘というのがどこにあるのかさっぱりわからない。探しあぐねて町役場に飛びこんだところ、ありがたいことに親切な職員が住所と行き方を教えてくれた。そこは海岸のあるヨークの中心部から、川を越えて南にしばらく行ったところの高台だった。
諦めかけていたサートンの家をついに捜しあて、その姿を間近に見たときには万感胸に迫るものがあった。本書が書かれてから30年をへた今も、写真で見たままのたたずまいは少しも古びていない(中略)。そして家の前に広がる広大な野原と海へ通じる小道も、まさに日記に書かれているとおり。小道をたどって海まで行くと、岩場に波が白いしぶきを立てて打ち寄せている。ただ、とりどりの花でいっぱいだったはずの庭やテラスの花壇には一輪の花もなく、かつての主の不在を際立たせていた。
(幾島幸子「訳者あとがき」より
copyright©IKUSHIMA Sachiko 2019
写真は1・2ともカーソルをあててクリックすると拡大します。
「訳者あとがき」には1のみ、モノクロで収められています。)
2019.10.11
荒川洋治『霧中の読書』
2019.10.10
C・G・ユング『分析心理学セミナー――1925年、チューリッヒ』 シャムダサーニ/マガイアー編 横山博監訳 大塚紳一郎・河合麻衣子・小林泰斗訳