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刃物たるべく

職人の昭和

著者
土田昇

焦土と化した国のあちこちに再び槌音が響く。戦時下には軍刀作りを余儀なくされた道具鍛冶たちも、鑿や鉋を作りはじめる。誠実な職人仕事によって、それぞれの小さな生活を成り立たせながら、技術伝達をおこたらず……
神武景気、岩戸景気、いざなぎ景気と呼ばれた、戦後のいくつかの好景気の波は、豊かさや便利さを生活にもたらす一方で、日本人の価値観や感性をも変えていった。より安価に、早く、多くのものを均一に生産しうる新技術や新素材は、道具を使ってものを生み出すことにかかわる価値観や道徳を変質させ、あれほどの輝きを放った技術の系譜は、昭和から平成へと時代が移る頃、老鍛冶・老職人たちの退場とともに終焉を迎えようとしていた。
時代の要請を失った最高レベルの技術。その生かしどころを求めて塔模型製作に没頭した天才建具師。使用者重視の製作思想のもと、かの千代鶴是秀を唸らせる実用道具を作った名工たらざる名工。鋸の目立技術に秀でた祖父の老いと死をとおして見えてくる職人の道徳……
木と鉄と石を介した感触の世界につねに立ち戻りつつ、失われたもの、受け継がれたものを描く。


目次


第一章 とばくちの話
大工の訓戒/ある鏝鑿/十代目石堂輝秀、宝物としての思い出話と戦後/名門職人家の明治維新――技術の生かしどころ、継続をもとめて/佐原の大祭――山車と大人形と職人の技術/“頓珍漢”――“輝秀”銘の量産体制の中で/鏝鑿の来歴――岡野和義と輝秀の五寸鉋/大工、戸田正治の道具箱/輝秀の鉋“雪晴”と鏝鑿を得て/二十五年後の無言の賭け/目覚めた短剣

第二章 祖や師の話
未熟者の修業時代/山口介左衛門の鋸/研ぎはじめる/研ぎつづける/両国の研ぎ屋、南條/仕事場脇の階段で/研ぎ職人の仕事/未熟者への新たな課題/千代鶴是秀の刳小刀――六百時間の研磨/是秀作一寸六分叩鑿――深夜の研ぎ/祖父母の徘徊と職人の道徳/無口な目立職人の息子自慢/三ノ輪の鋸継ぎ、高瀬/滅びを待つ「平坦な地」の職人達/祖父の死/遺品――是秀の狂い直し用の槌

第三章 塔の話
是秀の実用道具収集と調査/杉の白太の仕上げ削り――名工伝説と無名性/忘れられた建具屋、本田真松/まな板の寅の逸話/大工の仕事、建具屋の仕事/名人建具師の引き際/最後の仕事――三つの仏塔模型/「仕事は段取りである」/霧雨に煙る塔――25分の1法隆寺五重塔/仏塔模型のゆくえ/長谷川幸三郎の玄能/「血気盛んであった頃」を離れて/外からながめる目/溶暗/本田真松がこの世に残していったもの

第四章 回廊の話
「先代の作ったもののほうが良かった」/十代目石堂輝秀の葬儀/落合和吉への課題――宇一の改良ウラ金/技術系譜の区切り――昭和から平成へ/減退、消耗、消滅――道具の運命/千代鶴是秀の批評的言語/土田一郎の批評/死者より引き継いだ仕事/新しい時代の職人達/「もう少し研いでいらっしゃい」/“明楽組”薬袋明の真鍮口埋め方法/木考会とでく工房/ものを作る、狂乱好景気の中で/名工ならざる名工――鑿鍛冶、嶋村幸三郎/とり残された月島/秘伝もなければ奥義もない/嶋村幸三郎の仕事場/幸三郎の葬儀と橋向こうの事件/水路向こうを見つめる視線 /名品でなく、名工でなく


あとがき


著訳者略歴

土田昇
つちだ・のぼる

1962年、東京生まれ。土田刃物店三代目店主。父・土田一郎より引き継いだ千代鶴是秀作品の研究家であるとともに、木工手道具全般の目立て、研ぎ、すげ込み等を行う技術者でもある。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

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刃物たるべく

「刃物たるべく」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/312頁
定価 4,950円(本体4,500円)
ISBN 978-4-622-08892-9 C0072
2020年4月10日発行

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