アーカイブの思想
言葉を知に変える仕組み
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 320頁 |
定価 | 3,960円 (本体:3,600円) |
ISBN | 978-4-622-08970-4 |
Cコード | C3000 |
発行日 | 2021年1月18日 |
判型 | 四六判 |
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頁数 | 320頁 |
定価 | 3,960円 (本体:3,600円) |
ISBN | 978-4-622-08970-4 |
Cコード | C3000 |
発行日 | 2021年1月18日 |
「もし私が彼方まで見通せていたとしたら、それは巨人たちの肩の上に立っていたからだ」――アイザック・ニュートン
日本の社会では、いまなおアーカイブは必須の社会基盤とみなされていないのではないか。こう問いかける著者は、その根底にある要因を、古代ギリシアより言葉を記録する〈アーカイブの思想〉が息づく西洋の思想史・文化史・教育史のなかに探ってゆく。そして翻って、日本独自のアーカイブのかたち(写本、類聚等の出版物や江戸期の文庫など)を再考し、両者を比較することで浮彫りになる課題を問い直す。
デジタルネットワーク社会となった今日、私たちは世界中の知のアーカイブにつながり、それを活用することが可能となった。そこに開かれているのは、情報の荒野なのか、知の沃野なのか――それは、そこに立つ者のスキルと意欲しだいであると著者は述べ、独学と在野の知へ向かう人たちにエールを送る。
個人を助け、社会を支える基盤としてあるアーカイブ像を照らす、碩学による教育論であり、文化論である。
第1講 方法的前提
はじめに/用語の整理/アーカイブとアーカイブズ/〈文書〉と言語論的転回/文化翻訳論/日本文化の三層性/言語の透明性と構築性
第2講 西洋思想の言語論的系譜
ロゴスとは何か/プラトンとイソクラテスのパイデイア/ロゴスとしてのアリストテレスの著作群/12世紀ルネサンス/ルネサンス/フマニタス(人文主義)と近代科学/近代後期におけるロゴス/パイデイアのその後
第3講 書き言葉と書物のテクノロジー
書くとはどういう行為か/書物と文書・記録との違い/書物のテクノロジー/古代・中世の書物/グーテンベルクの活版印刷術
第4講 図書館と人文主義的伝統
図書館はどのように始まったか/アレクサンドリア図書館とは何か/中世から書物の共和国へ/読者の誕生/修道院と読書/コレクションとミュージアム/学術知の成立
第5講 記憶と記録の操作術
ユーグの読書論/記憶術とは何か/レファレンス書の完成/書誌と分類/書物の共和国の図書館
第6講 知の公共性と協同性
百科全書と啓蒙主義/教養とは何か/研究型大学と大学図書館/都市に埋め込まれた知/公共図書館の制度化/図書館専門職の誕生/知の大衆化と図書館サービス
第7講 カリキュラムと学び
陶冶とディセルタシオン/バカロレアの哲学問題/パイデイアの20世紀的展開/媒介される知と行動に移される知/学校改革のための図書館的知/国際バカロレアにおける学校図書館
第8講 書誌コントロールとレファレンスの思想
世界書誌の夢/書誌とドキュメンテーション/FRBRモデル/分類法と主題/知的コンテンツのメタデータ/書誌コントロールという課題/レファレンスとレファレンスサービス
第9講 日本のアーカイブ思想
日本人の言葉とアーカイブ/江戸のリテラシー/会読の重要性/書物のアーカイブ戦略/近代世界システムにおける明治維新/殖産興業と学術知/博覧会、博物館、図書館/近代の学校教育制度/江戸から明治へのアーカイブ戦略/教養主義と「買って」読むこと/近代日本の知の在り方
第10講 ネット社会のアーカイブ戦略
20世紀のハイパーメディア構想/テクストとマルチメディア/カノン(正典)とは何か/育たなかったアーカイブ装置/国立国会図書館と憲政資料室/アーカイブの活かし方
エピローグ
知のネットワークとアーカイブ/カノンとフーガ/独学と在野の知
あとがき
索引