みすず書房

芸術家と医師たちの世紀末ウィーン

美術と精神医学の交差

判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数 360頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-08985-8
Cコード C1070
発行日 2021年3月16日
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芸術家と医師たちの世紀末ウィーン

19-20世紀転換期のウィーンで花開いた〈世紀末ウィーン〉と精神分析。価値観をゆるがす二つの文化が、近代化の進むこの中欧の都において同時に興ったのは、偶然ではない。
本書で俎上に載せられるのは、〈世紀末ウィーン〉を体現する芸術家の面々とその代表作である。クリムトの描く女性たちとヒステリーや神経衰弱の身体表象、分離派館(オルブリッヒ)とプルカースドルフ・サナトリウム(ホフマン)の白い建築と「近代生活からの避難所」、「芸術的な改良服」と「モードかスタイルか」の議論、造形における装飾(分離派)と無装飾(ロース)の論争とセクシュアリティ、ココシュカのアルマ人形と「投影」、クービンの夢と記憶の「二次加工」――このように、芸術と精神医学の関係性が入念な資料読解のもとに跡づけられ、さらにその先へと考察がおしすすめられてゆく。
気鋭の美学研究者が、西洋美術史における〈モデルネ〉の分析に挑む、清新な世紀末ウィーン論。

 

目次

序論
第I部 身体と空間
第1章 クリムト的女性像──ヒステリー的ファム・ファタルと神経衰弱的ファム・フラジール
1. 学部絵のスキャンダル
1. 1 「病的」な女性像
1. 2 「狂人」としてのクリムト
2. ヒステリー的ファム・ファタル
2. 1 ヒステリーのコレオグラフィー
2. 2 ヒステリーの受容
2. 3 女性の観察者としての画家/医師
3. 神経衰弱的ファム・フラジール
3. 1 「神経質」な女
3. 2 プルカースドルフ・サナトリウムの神経衰弱的ファム・フラジール

第2章 世紀末ウィーンのホワイト・キューブ──分離派館とプルカースドルフ・サナトリウム
1. 「芸術の神殿」としての分離派館
1. 1 分離派展における作品の「礼拝価値」
1. 2 空間の精神病理学
2. 「芸術の神殿」からホワイト・キューブへ
2. 1 休息の場としての展覧会
2. 2 総合芸術作品としての展覧会
3. 白い壁の詩学
3. 1 ホワイト・キューブとインターナショナル・スタイル
3. 2 白い壁の「気分」
3. 3 白のユートピア
小括

第II部 様式と装飾──「退廃」と「進化」
第3章 浮薄なる様式──スタイルとしてのモード
1. 「改良服」から「芸術的な改良服」へ
1. 1 1900年代初頭の「改良服」
1. 2 1905年以降の「芸術的な改良服」
2. モードの進化論
2. 1 衣服における進化と退廃
2. 2 「覆い隠すと同時に露にする衣服」
3. スタイルとモード
3. 1 スタイルとモードの力学
3. 2 総合芸術におけるモード

第4章 装飾とセクシュアリティ──分離派とアドルフ・ロースの装飾観
1. 二つの装飾観
1. 1 装飾芸術と反装飾
1. 2 芸術と建築
2. 装飾の論理
2. 1 文化の発展
2. 2 フェティッシュとしての無装飾
2. 3 欲動の「昇華」
2. 4 クラウスの装飾批判
3. ファム・ファタルの装飾
3. 1 クリムトの眼状装飾
3. 2 ロースの《ジョセフィン・ベイカー邸》
小括

第III部 トラウマとトラウム
第5章 肖像としての人形──オスカー・ココシュカのアルマ人形をめぐる一考察
1. ココシュカと人形
1. 1 フェティッシュとしてのアルマ人形
1. 2 ココシュカの反応の分裂
2. 人形絵画
2. 1 《青い服の女》と《画家と人形》──人間と人形の間の揺らぎ
2. 2 《イーゼルの前の画家》──オルペウスとしてのココシュカ
3. 人形と肖像画
3. 1 自己投影の肖像画
3. 2 ココシュカの肖像画における「人間の人形化」

第6章 アルフレート・クービンにおける夢と記憶──1909年から1930年代の作品と言説を中心に
1. 夢の素描と夢の小説
1. 1 『トラウムラント』(1922)と『裏面』(1909)
1. 2 フロイトに対する反応
1. 3 夢を「構成」する──イメージの二次加工
2. 夢から記憶へ
2. 1 クービンにおける「遮蔽想起」
2. 2 想起と反復
2. 3 挿絵画家としてのクービン
小括

結論

あとがき

参考文献
索引