みすず書房

「俳句は今の今がいのち、ではあるまいか。写生句にせよ回想句にせよ、さながら眼前に気配を伴えばこそ。柿食えば法隆寺の鐘が身近に響くようだし、雪降れば明治がはるかに遠くなるではないですか」
「芭蕉このかたこんにちまであまたの先達各位の句集などから、おりおりにこころ惹かれる句々を手控えておこう。そうして日々の思案や感慨の、引きだし役やまとめ役になっていただくのはどうだろう。(…)月々の季節の移ろいにつれて、または継起する天下の出来事に目をみはりつつ、あちらの先達やこちらの知友の名吟佳吟と、いささか勝手ながらおつきあいいただいて三々五々、連れ立って歩いていこう。そこで題して〈賛々語々〉」

俳句で世語り、街歩き——「賛々語々」ほか東日本大震災からコロナ禍の現在まで、世相と軽やかに切り結びつつ著者が綴り残した珠玉のエッセイ。絶筆「花吹雪」収録。

目次

非暴力の潮 3・11と私
わが俳句的日常
賛々語々 二〇一六
賛々語々 二〇一七
賛々語々 二〇一八
賛々語々 二〇一九
賛々語々 二〇二〇
賛々語々 二〇二一

II
春は花見か?
俳句を歩く 鰹篇
ビールと俳句と 明治より平成まで
ソース焼きそば 烏森縁日回想
妻と歩く
俳句でありがとう

III
江戸切絵図で歩く
私説東京七富士塚
上野 むかしを偲ぶ坂めぐり
昭和四十年代、町名変更という大事件
銀座八丁目の風
新橋いまむかし

IV
『アメリカ様』今昔
そのころと、唯今と 運動族の命運
汚い原稿の美しさ
『遠い城』を眺めて
津野海太郎と新日本文学会
回想・神田貞三と私
池内さんとゲーテさん
東京の人・坪内祐三
花吹雪 「賛々語々」遺稿

編集付記

書評情報

松村 由利子
(歌人)
信濃毎日新聞 2021年10月2日
上原 隆
(コラムニスト)
サンデー毎日 2021年10月17日号

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