みすず書房

アンネ・フランクとスピノザは、ともに迫害されて故国を離れ、アムステルダムにたどり着いた移民二世だった。世界から人々を引きつけるこのグローバル都市は、すでに400年にわたって移民や難民を受け入れてきた「寛容」な街だ。とくにユダヤ人の受容では、西欧でも有数の規模を誇る。そして街の随所にある広場は、市民の日常生活の場であると同時に、移り住んだばかりの新参者にとっても、都市社会になじみ、人と繋がる重要な空間だった。アンネも引っ越してから8年間、思いっきり広場で友だちと遊んでいた。
しかし1940年、ナチ・ドイツが侵攻してユダヤ人迫害がはじまると、アンネ一家のように隠れ家に潜んだ人たちもいたが、最終的にはオランダから10万人を超えるユダヤ人がアウシュヴィッツなど強制収容所に送られ、その多くが死亡した。
他方アムステルダムでは、保育士、大学生、法律家などさまざまな人々が、命がけでユダヤ人を支援するレジスタンス活動に加わった。現在、世界のあちこちで戦火は絶えず、難民が増えつづけている。日本にとっても、この街の経験は示唆的だろう。
なお、アンネとオードリー・ヘプバーンは同い年。このふたりの人生は、意外なかたちで交差する。戦争に翻弄されるなかで、いくつもの物語が生まれた。

第36回和辻哲郎文化賞最終候補作。

目次

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序章 「隠れ家」と「広場」
第2章 「寛容の国」オランダ共和国の光と影
第3章 19世紀アムステルダム、都市改革の夢――サルファーティの「約束の地」
第4章 メルウェーデ広場の青春――広場の少女アンネ
第5章 「涙の館」、オランダ劇場にて
第6章 保育士たちのレジスタンス
第7章 学生たちのレジスタンス――大時計の下で
第8章 カルマイヤーのリスト――法律家たちのレジスタンス
第9章 オードリー・ヘプバーンとアンネ・フランク――魂の邂逅
第10章 隠れ家、その後――アンネと仲間たちの「命のバトン」
第11章 終戦と解放――『アンネの日記』が刊行されるまで
第12章 戦後補償と歴史認識の新展開
終章 明日もきっと、元気でね――トークショーの女王、ソンヤ・バーレント

あとがき
注
索引

書評情報

 

産経新聞

 2023年7月16日

齋藤純一

(政治理論)
週刊読書人「上半期の収穫」 2023年7月28日

西口拓子

(ドイツ文学)
週刊読書人「上半期の収穫」 2023年7月28日

前田健太郎

(東京大学教授・行政学)
「寛容な町 戦時下の迫害と抵抗」
朝日新聞

 2023年8月5日

山崎佳代子

(詩人)
「オランダ ユダヤ人史 光と影」
日本経済新聞

 2023年8月12日

 

「「ナチのアムステルダム」 都市の悲劇と市民の闘い」
外交 第81号(2023年9-10月)

お詫びと訂正

本書第1刷(2023年6月発行)に、次の誤りがございました。謹んでお詫び申し上げますとともに、ここに訂正いたします。

  誤 正
128頁 6行目 チェコスロバキア ポーランド