みすず書房

「自分のもつ能力を最大限に発揮するのはやっぱり面白い。たぶん、面白いと感じるようにできている。(…)ナツすら山旅犬としての能力を発揮する瞬間瞬間を楽しんでいるように見える。存在の理由や意味など考えずに、ただ脳内の快楽物質が生成される刹那を求めて生きている。人は犬のようになれないのか?」
この旅で50歳を迎えたサバイバル登山家が、現金もクレジットカードも持たず、愛犬ナツを連れて、宗谷岬から襟裳岬まで、晩秋の北海道南北分水嶺700kmをまる2か月かけて歩き通した。背負っている食料は米と調味料だけ。河原で野営し、おかずは鹿を撃って食いつなぐ。新雪の大雪山系を越え、さらに日高山脈を南へ。著者のサバイバル経験の集大成とも言える旅のドキュメント。

カバー写真(表) 幌尻岳山頂
カバー写真(裏) 楽古岳山頂
表紙写真 野営地にて(このあと強制退去)

目次

序章 旅立ち前
五〇を前に惑う  ナツとの出会い  山旅犬  覚醒の途中  荒野の旅

I 前半戦
宗谷丘陵
まず羽田まで  北海道上陸  宗谷岬へ  牧場の分水嶺
森から強制退去
気のいいおじさん  国有林の山旅  強制連行  宗谷の日曜日  一日の歩行スタイル  道迷い  問寒別のヒグマ
街を歩く
ヒグマの親子  牧草地の奥で  国道を使って  車道に出る  中川町に入る  コンバット  国道を歩く
天塩岳ヒュッテへ
音威子府通過  街場の調達食料  クズ野菜の助け  引退セレモニー  豆ご飯  朝日町  野菜調達方法  廃道の鹿  天塩岳ヒュッテ

II 中盤戦
大雪山系を越えて
デポ回収  完全休養日の目論み  天塩岳の登山者  廃道  国道の誘惑  誕生日の層雲峡  大雪越え
山小屋芽室岳へ
廃道  ヌプン小屋  荒野の旅  十勝川林道  新得の街場  デポという不確定要素

III 後半戦
ナツを待つ
旅の核心部へ  チロロ越え  幌尻越え  新冠ポロシリ山荘  古道ナメワッカ沢  ナツ行方不明  犬と山を歩く意味  ペテカリ山荘へ
襟裳岬を往復する
基礎疾患対策  いよいよ終盤戦へ  ペテガリ岳  終盤戦開始  冬将軍到来  食料制限  アタック準備  岬アタック開始  襟裳岬
旅の終わり
本町無料休憩所  謎のオッサン  現金があるということ  現金があるということ 2  楽古岳越え クッキーシュー  生還

ちょっと長いあとがき

書評情報

稲泉連
「「現金」も「クレカ」も持たずに北海道を縦断! 犬と狩猟しながらのサバイバル旅」
週刊新潮 2023年10月26日号
北海道新聞
「訪問」欄 著者インタビュー「北海道分水嶺700キロ 集大成の旅」
2023年10月29日