みすず書房

ロシアのウクライナ侵略、イスラエルによるパレスチナ占領、自治区ガザへの大規模攻撃。世界は国際法が堂々と破られるさまを見続けてきた。国際法はなぜこれほど無力なのだろう。しかし、国際法の実効性が脆弱なことは以前から明白であったし、そもそも国際法と呼ばれるものの中味も統一的ではない。にもかかわらず、そうした問題が真摯に議論されることはあまりなかった。本書が国際法を「奇妙な法」と呼び、国際法学を「奇妙な学問」と呼ぶのはそのためである。
とはいえ、国際法学の内部で国際法の批判的検討が皆無だったわけではない。それはマルティ・コスケニエミ、アンソニー・カーティ、ロザリン・ヒギンズ、デイヴィッド・ケネディらによって担われてきた。本書では、こうした研究者の議論を整理・検討し、その成果を糧とすることで、既存の国際法の〈後〉に来るべきものについて、筆者独自の展望を切り拓いている。
実効性なき国際法の構造的問題は、これ以上看過できないところまで来ている。国際法学の内部で批判が行われるだけでは不十分だろう。国際法の再構築は、決して法の専門家だけに委ねられるべき事柄ではないのである。

目次

序論 脱構築さるべきもの

第1章 奇妙な法
第2章 奇妙な学問
第3章 国際法を不確定にするもの――総仮設構造の世界
第4章 非世界政府の非世界法(国際法の制度)
第5章 異議申し立て(または自己相対化)としての国際法理論
第6章 理論と構想
第7章 時間を巻き戻す――理論だけにできること

あとがき

索引

関連リンク

なぜこれほどの国際的難題を前にして国際法は機能しないのだろう

「あとがき」より抜粋(WEBみすずサイト「新刊紹介」)