みすず書房

世界の見方の転換 3【新装版】

世界の一元化と天文学の改革

判型 四六判
頁数 584頁
定価 5,720円 (本体:5,200円)
ISBN 978-4-622-09678-8
Cコード C1340
発行日 2024年1月10日
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世界の見方の転換 3【新装版】

アリストテレス・パラダイムの正否を数値的に検証するという決定的な問題を提供したのは、16世紀の彗星・新星の観測であった。この世紀に醸成された、自然研究の実証的方法にたいする新たな信頼と、高められた観測精度を足場に、ティコ・ブラーエやメストリンをはじめとする傑出した天文学者たちがドグマを次々に排してゆく。ティコの体系、ジョルダノ・ブルーノの無限宇宙など、宇宙像の刷新もダイナミックに模索される。そして、理論・技能・認識のすべてにわたる変革はついに、ケプラーの天体力学に結実する。
ケプラーが自身の理論を打ち立てた思考過程と、それと不可分でありかつ現代の科学者のものとは根本から異なるケプラーの哲学・科学思想のニュアンスを精緻に読み解く最終章は、圧巻と言うほかはない。
もっとも、ケプラーに限らない。史料原典・研究文献をはば広く読み込み、全3巻を通して浮沈する有名・無名の人物それぞれの構想と創意を丹念に跡づけ、読者にその思索の軌跡をいきいきと追体験させる手腕は、著者の真骨頂と言える。歴史研究の興味に心躍らせながら本書を読み終えたとき、前二著と合わせた〈三部作〉が提示する一個の史観が凛然と浮かび上がる。

[初版2014年3月20日発行]

目次

第3巻 世界の一元化と天文学の改革

第9章 彗星についての見方の転換——二元的世界溶解のはじまり
1 彗星の自然学的理解
2 彗星予兆説と占星術
3 定量的彗星観測のはじまり
4 ポイルバッハと彗星観測
5 視差をもちいた彗星高度の推定
6 1531年のハレー彗星
7 アリストテレス気象論のほころび
8 彗星についての新しい見方の登場
9 セネカの『自然研究』をめぐって
10 パラケルススの宇宙

第10章 アリストテレス的世界の解体——1570年代の新星と彗星
1 1572年の新星
2 ヘッセン方伯ヴィルヘルムIV世
3 ティコ・ブラーエと新星
4 ミハエル・メストリンと新星
5 古代的宇宙像崩壊のはじまり
6 ティコ・ブラーエと天文学
7 1577年の彗星観測
8 ティコとメストリンのアリストテレス批判
9 メストリンによる月の観察
10 アリストテレス批判からコペルニクス説へ
11 ティコ・ブラーエと占星術

第11章 ティコ・ブラーエの体系——剛体的惑星天球の消滅
1 ティコ・ブラーエとコペルニクス理論
2 ティコ・ブラーエの天体観測
3 ティコ・ブラーエの観測精度
4 ティコ・ブラーエの体系にむけて
5 パウル・ヴィティッヒ
6 クリストフ・ロスマン
7 剛体的惑星天球の否定
8 ロスマンとコペルニクス理論
9 ティコの体系のもたらしたもの
10 ジョルダノ・ブルーノと無限宇宙
11 パトリッツィとリディアット

第12章 ヨハネス・ケプラー——物理学的天文学の誕生
1 メストリンとの出会い
2 ケプラーの出発点
3 宇宙の調和的秩序
4 ティコ・ブラーエとの出会い
5 ケプラーとウルスス
6 天文学の仮説について
7 幾何学的仮説と自然学的仮説
8 物理学としての天文学
9 物理学的太陽中心理論
10 ケプラーの第0法則
11 円軌道の破綻
12 地球軌道と太陽中心理論の完成
13 等速円運動の放棄と面積法則
14 楕円軌道への道
15 ケプラーの第1法則
16 第2法則の完成
17 第3法則とケプラーの物理学
18 プラトン主義と元型の理論
19 ケプラーにとっての経験と理論
20 おわりに——物理学の誕生

付記C ケプラーの法則に関連して
C-1 火星軌道の決定 その1 第0法則の検証
C-2 火星軌道の決定 その2 等化点モデルの検証
C-3 地球軌道の決定 離心距離の二等分について
C-4 卵型軌道近似の誤差
C-5 楕円軌道の磁気作用による説明
C-6 火星軌道の決定 その3 直径距離と面積法則
C-7 ケプラーの思考の実例 第3法則の力学モデル

付記D ケプラーと占星術
D-1 ケプラーの占星術批判
D-2 星相の理論と有魂の地球

注記
文献(一次資料/資料集・辞典/二次資料・研究書)
雑誌名・全集名・辞典名・著者名略記号
人名索引

書評情報

水野和夫(日本大学教授・経済学)
朝日新聞2014年6月1日
池内了(宇宙物理学者)
信濃毎日新聞2014年6月8日
猪野修治(科学史、湘南科学史懇話会主宰)
週刊読書人2014年8月15日(金)
小松美彦(武蔵野大学教授、科学史・生命倫理学専攻)
週刊読書人「2014年の収穫」2014年12月12日(金)
佐々木力(中国科学院大学教授、科学史・科学哲学専攻)
週刊読書人「2014年の収穫」2014年12月12日(金)
菊地原洋平
化学史研究Vol. 42