みすず書房

デジタルの皇帝たち 電子書籍あり

プラットフォームが国家を超えるとき

CLOUD EMPIRES

How Digital Platforms Are Overtaking the State and How We Can Regain Control

判型 四六判
頁数 376頁
定価 4,400円 (本体:4,000円)
ISBN 978-4-622-09723-5
Cコード C0033
発行日 2024年8月16日
電子書籍配信開始日 2024年9月6日
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デジタルの皇帝たち

〈画面越しで虚空に向かって初めてメッセージを送り、短い小休止のあとに、見ず知らずの人から返事を受けたときは、わくわくした。黒いガラスにただ単色の文字が見えただけだったが……(本書第2章より)〉

テクノロジーと自由を誰よりも愛したサイバーリバタリアンのジョン・バーロウ、人々の信頼を裏切る中央当局を排除するために仮想通貨Bitcoinを世に放ったサトシ・ナカモト、完全な自由市場のはずが「ソ連2.0」へ傾くUberの創設者トラビス・カラニックとギャレット・キャンプ、宇宙にまで手をのばすAmazonの皇帝ジェフ・ベゾス……。これらデジタルプラットフォーム君主たちの野望や、栄光と蹉跌の経済学的メカニズム、そして彼らに抗った人々を、生い立ち・思想・行動の面から、ストーリーとデータで描く。デジタルテクノロジーを駆使する彼らが直面する、中世ヨーロッパやソ連の人々と共通の課題とは?
自由のためのプロジェクトが不自由をもたらすのはなぜか、君主への反乱の成否は何が決めるのか、デジタル帝国が強大な力を握ることの問題はなにか……。サイバーリバタリアンの理想が生んだ「雲の上の帝国」と、地上の国家の比較から、私たちがコントロールを取り戻す道筋を引きだす希望の書。プラットフォームも、国家も、重要なのは「制度」だ!

目次

第1章 序論
3000年の歴史が30年に/古代からある問題/祖先からのインスピレーション/本書の読み方

第I部 経済的制度
第2章 互恵主義――サイバースペースの黄金律
デジタルカウボーイ/一独立宣言/交換問題/協調関係の進化/電子マーケットでのトラブル/労働力のためのグローバル市場?/永遠の9月/形あるものの必要性

第3章 評判から規制へ――巨人の誕生
エコーベイ・ドット・コム/5分の5/封筒が詰めこまれた袋の山/恐喝メール/死人にレビューなし/ルールの世界

第4章 プライバシーのジレンマ――仮面舞踏会で秩序を維持する
ドレッド・パイレート・ロバーツの仮面/もっとも大胆で厚かましい試み/祝日のサプライズ/露わになった顔/プライバシーのジレンマ/仮想のパスポート

第5章 距離の死、境界の復活――サイバースペースの労働市場
距離の呪縛/「ハーバード卒と言ったところで……」/同じ労働、異なる賃金/サイバースペースのグローバル化/雲の上(クラウド)にあることの強み

第6章 中央計画自由市場――ソ連2.0のプログラミング?
人間の不完全性の排除/より「賢い」市場/アルゴリズムが市場になる/完全な市場/バッジとナッジ/ソ連2.0への夢中歩行/誰にとって最適なのか?

第II部 政治的制度
第7章 ネットワーク効果――デジタル革命家からエブリシング皇帝へ
打ち砕かれた野望/打ち上げ/デジタル革命/「いい意味で、平等主義」/「アマゾンは弱者をまた一人潰している」/司令官

第8章 クリプトクラシー――政治を技術に置き換える探究
信頼問題/シビル攻撃の阻止/もっとも危険なプロジェクト/機械の中のバグ/ソフトウェア・アップデート/利害衝突/ルール市場の崩壊/信頼できる中央機関/クリプトクラシーの興隆

第9章 集合行為 I――インターネット労働者は団結する?
疑似人工知能/ターカー・ネーション/アダルト・コンテンツ/「政府の人間が気にかけるには不十分」/万国のデジタル労働者/フリーライダー問題/「よくもまあ、弱者から搾取できるな」/プラットフォーム政治の到来

第10章 集合行為 II――デジタル中流階級の興隆
20ヵ国以上に散らばる顧客/ダビデ対ゴリアテ/「自分の会社を失ってしまう」/「チームを組んで大きな声を上げよう」/デジタル中流階級の興隆

第III部 社会的制度
第11章 デジタルセーフティーネット――プラットフォーム経済の社会保障と教育
技術的失業/グーグルによる認定/ほころびが目立つ福祉国家/デジタルセーフティーネットへの加入/観衆を引き付ける/アマゾンによるケア/人民か利益か

第12章 結論
大いなる裏切りを理解する/①社会秩序の維持という課題/②規模の問題/③範囲の経済/④中央計画経済の魅力/なぜプラットフォームは国家を超えるのか?/領土なき国家/デジタル単一市場の構築/デジタル暴君を退位させる/ルール市場の失敗/必要不可欠なインフラか、創造的な無秩序か?/プラットフォーム国家主義か、プラットフォーム協同組合主義か?/ブルジョア革命/デジタル憲法の草案/創業者への借り

謝辞
原注
索引

書評情報

川元康彦
(共同通信記者)
「仮想の「国家」 どう統治」
沖縄タイムス (ほか共同通信配信)2024年8月24日
『事業構想』
2024年11月号「MPDの本棚」
夏目啓二
(龍谷大学名誉教授)
「業界支配への抵抗や反抗に焦点」
しんぶん赤旗 2024年10月13日
岡田羊祐
(成城大学教授)
「市場設計者が公共担う矛盾」
日本経済新聞 2024年10月19日

関連リンク

古代ギリシャ・ソ連・デジタル帝国

デジタルプラットフォームが、国家のような役割を国家より果たしていることには問題がある、というのが本書全体の問題意識だ……編集者からひとこと(WEBみすずサイト「新刊紹介」