みすず書房

語り、聞く 沖縄の戦世

戦中・戦後の生活史

判型 A5判
頁数 272頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-09861-4
Cコード C0036
発行日 2026年6月10日
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語り、聞く 沖縄の戦世

2025年、戦後80年の節目に戦中・戦後の沖縄を生きた人々の来し方を文章にして残そうと、沖縄タイムス紙上で「沖縄の生活史~語り、聞く 戦世」と題した企画がスタートした。
募集に応えた「聞き手」らが、戦時の記憶を持つ「語り手」を思い思いに選び、その語りを聞き取った。そうして出来上がった計30篇の生活史が、2025年8月から2026年3月まで、半年以上にわたって沖縄タイムス紙に掲載された。本書は、そのすべてを1冊にまとめたものである。
沖縄は日本で唯一の、住民を巻き込んだ苛烈な地上戦の戦場となった土地である。戦争に巻き込まれながらも懸命に生き抜いた市井の人びとの、貴重な、無二の語りがここに。
解説=石原昌家(沖縄国際大学名誉教授)

目次

まえがき 沖縄タイムス社

山道で一人の老婆が倒れていました。体は衰弱しきっていて、か細い声で「お水をください」と私に呼びかけたのです
聞き手=糸数慶子(七七) 語り手=恩師・仲眞竹子(九六)

だけど、軍隊ではそのような優しさは通用しなくてね。規則を破ったことでひどく𠮟られた
聞き手=妹(八四) 語り手=姉(九七)

そうね。自分たちもいつ死ぬか分からないから、みとるというよりも、姉さんは、どんなしてこのお父さんの死体を埋葬するか、一人で考えていたと思う
聞き手=上原稜啓(三〇)、花野(二九)、舜(二六)、隆太郎(二二) 語り手=祖母・上原史子(九五)

本土の方はゴザ敷いて。初めてゆで卵見てね、もううらやましくしてよ。あんたも上がりなさいっていう人はいなかったよ
聞き手=榮門琴音(四三) 語り手=祖父・榮門忠(一〇一)

戦争があれしてから、毎日、避難民が山から下りてる。避難民が全部、いっぱいいるけど、あんしぇ死ぬ人が、今日は何十名、今日は百名って、どんどん増えていってからに
聞き手=大庭紗英(二六) 語り手=小川哲夫(九五)

センスがあったんだはずよ
聞き手=荻堂志野(三三) 語り手=祖母・花城富子(九二)

その時、その家族と暮らしていたらよ、三股の子どもになっていたらよ、全然違っていた生活だったはずね
聞き手=嘉納英明(六二) 語り手=義母・比嘉清子(八七)

いやもう素早いんだ。それがみんなの最期なんだよな
聞き手=我部太郎(六二)、酒井文(五六)の夫妻 語り手=太郎の父・我部存(八九)

怖かったよ本当。だからね、人が住んでるのに何もしないのに。怖いんだよ、本当に三年生だったからね
聞き手=狩俣英美(三五) 語り手=祖母・知念菊(九〇)

理不尽なことはたくさんあったのですが、どうしようもありませんでした。それが戦争なのです
聞き手=川上明美(七〇) 語り手=元同僚・宮城玲子(八八)

僕がおしっこをかけた兵隊さんは、生き延びたのか、気になるね
聞き手=儀間芳奈(四七) 語り手=父・伊波勝雄(八六)

久得から屋良まで遠くて、学校に向かうのはとっても大変だったよ。もうフェンスの向こう側にあるからそこに行くことはできないね
聞き手=金城睦佳(二五) 語り手=祖母・金城美津子(八九)

わんねーあまくまーるうびとーしがあちまてぃあんしその場で戦争ぬ歌? 聞かせたさねー
聞き手=久志隆子(七〇) 語り手=おば(八五)

そうして、同伴していった船がね、一隻沈んだんじゃないかな。泊かなんかあの辺の子どもたちが乗っていたのだと思うけどね
聞き手=酒井織恵(五五) 語り手=叔母・稲嶺桂子(九〇)

だから、心残りはないさ。な、父ちゃん、な。はっしゃびよ。威張ってるよ。本当よ、字も分からん人が
聞き手=砂川大悟(四五) 語り手=知人・平良ヨシ(九三)

飛行機から「やんばるの方に疎開しなさい」ってビラが落ちよったって。その話をよくしてたね
聞き手=知念渉(四〇) 語り手=伯父・德元尚孝(七八)、妻・エツコ(七八)

あんたちは、辺野古のやんばるに避難しよーねーって馬車に乗せていこうとしてるときに、十・十空襲の戦闘機がビューンビューンして飛ぶのが見えたわけさ
聞き手=知念咲希(一四) 語り手=祖母・赤嶺スミ(八九)

月んあたがやー、ねーんはじどう。真っ暗しんりいいしやか、ふんとぅぬ真っ暗しんのあらん
聞き手=徳元加代子(六六) 語り手=父・屋宜宣治(九二)

あいやぁ、もう戦争の弾の中からあんなにしてしのいできてね、こんな形で亡くなったと思って、もう涙が止まらんわけさ 
聞き手=渡名喜華苗(三三) 語り手=祖母・宮里千代子(九三)

そしたら、そういう国で勉強したいとかそういう国の人と仕事したいって思うようになった
聞き手=仲間尚子(六四) 語り手=父・玉城靖志=享年九〇

終戦後なったら、アメリカーが家まできよったよ。いたずらしにでしょうね。缶詰一つ持ってきたりとか
聞き手=比嘉共樹(五二)、金城琉生(一四)、島袋光志郎(一二)、小川幸乃美(一二) 語り手=琉生の祖母・金城文子(九八)

よく生きていたなあとおやじは言っていたけど、戦争中は生死を確かめることもできない、家族ばらばらだった
聞き手=藤井誠二(六〇) 語り手=歴史劇作家・亀島靖(八二)

手当てしようとしたけど、父は「早く逃げなさい」と。今、考えたら傑作だけど、逃げなさいって言われても逃げ場はないんだから
聞き手=藤本朋子(五四) 語り手=元上司・儀間朝徳(八六)

壕だったから、そこに入ったら「バカ野郎」って。「住民が入るところないよ」って。うちなんか出されたから。日本の兵隊によ
聞き手=宮城千恵(六七) 語り手=叔母・安和昭子(九五)

マラリアかかってる人はもう髪の毛が落ちるぐらいの熱だよ。あれはかかってみない人しか分からん
聞き手=娘(五七) 語り手=母・當山マサ子(八七)

あん時ね、電気もないから、夕方、防空壕の中、暗いから、大きな鏡持っていってね、あの兵隊が
聞き手=山城あきこ(三八) 語り手=同僚の父・金城成市(九四)

武器はない、沖縄人としてのプライドがある。お前らピストル持ってるけど、こっちは沖縄人としてのプライドを持ってる
聞き手=山脇佳(三〇) 語り手=彫刻家・金城実(八七)

あの人はいい人だったのにという人でも本当に戦争という大きな出来事の中で人間がもう変わっていくんですよね
聞き手=𠮷井美知子(六七) 語り手=国吉朝政(八五)

また名護から行くときに海よ、海! 船がいっぱいだった。あの照明弾といって。照明弾が赤がーして。また、お母やー、お母やーって泣いてよ
聞き手=吉門夏輝(三四) 語り手=祖母・吉門文子(八九)

マラリアというのはもう、二度とあんな病気見たくないなと思うくらい怖かった
聞き手=綿貫円(三六) 語り手=友人の祖母・登野城米子(九一)

解説 石原昌家