みすず書房

■A5判 各巻平均600ページ

構造人類学の探究の頂点に位置し、20世紀思想の金字塔と讃えられるレヴィ=ストロースの主著『神話論理』全5冊(原著は全4巻)を、ここに刊行する。10年以上の年月とほぼ2000ページを費やして成ったこの大著は、南北アメリカ大陸先住民の813の神話を扱いながら、自然から文化への移行を読む驚くべき想像力、南アメリカのボロロから北アメリカまでの範囲を広げた地理的運動のダイナミズム、神話の論理に見られる二項対立の思考への構造分析の緻密さによって、まさに比類がない。神話的思考の普遍性を示した、圧巻の文明批判の書である。

  • I 『生のものと火を通したもの』
    II 『蜜から灰へ』
    III 『食卓作法の起源』
    IV-1 『裸の人』 1
    IV-2 『裸の人』 2(邦訳二分冊)
  • 最終巻に邦訳版独自の全巻神話索引(M1‐M813
  • 『神話論理』編集委員会(吉田禎吾・早水洋太郎・渡辺公三・木村秀雄)

シリーズ完結のごあいさつ

『裸の人』2の刊行をもちまして、レヴィ=ストロース『神話論理』は邦訳全5冊が完結いたしました。原著刊行から四十年越しのシリーズ完結です。
フランス語版第 I 巻の出版は1964年、みすず書房はその二年後に日本語版版権を取得し、『野生の思考』(1976年)の名訳で知られる故・大橋保夫先生に、『野生の思考』の次に翻訳をお願いする予定だったときいています。構造主義が日本に本格的に紹介されつつあった当時、訳者は大橋先生をおいて考えられませんでした。
大冊のため共訳のチームが組まれ、じっさいに『野生の思考』の直後から翻訳が始まりました。しかし原著者の文章をつかみとる困難に加えて、訳語や文体をめぐる訳者間相互の厖大な調整、その上に諸事情も重なって、ようやく大橋訳「序曲」が月刊『みすず』に掲載されたのが1992年初頭のことでした(『みすず』1992年1月号・2月号に分載)。
全巻の翻訳態勢を見直し再スタートという矢先に、大橋先生は急逝なさいましたが(1998年)、動き出したプロジェクトは巨大な車輪が少しずつ回るように前進しました。第 I 巻・第 II 巻を単独訳された早水洋太郎先生は、大橋保夫先生門下です。第 III 巻と第 IV 巻1・2では、吉田禎吾先生・渡辺公三先生・木村秀雄先生を中心とする共訳になっていることはごらんのとおりです。それにしてもさらに年月がかかったのは、総力を結集して翻訳にのぞんでも、生い茂る神話の森の奥深くまでレヴィ=ストロースの踏み跡を見通すのはとてもむずかしいことだったからです。

著者レヴィ=ストロースの生前に日本語版をお目にかけられなかったのが悔やまれますが、これまで長いあいだお待ちいただき、さまざまに支えてきていただきました読者のみなさま、関係者のみなさま、本当にありがとうございました。 感謝申し上げます。(2010年2月)

クロード・レヴィ゠ストロース

(Claude Levi-Strauss)

1908年11月28日ベルギーに生まれる。パリ大学卒業。1931年、哲学教授資格を得る。1935年、新設のサン・パウロ大学に社会学教授として赴任、人類学の研究を始める。1941年からニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで文化人類学の研究に従事。1947年末パリに戻る。1959年コレージュ・ド・フランスの正教授となり、社会人類学の講座を創設。1973年アカデミー・フランセーズ会員に選出される。1982年コレージュ・ド・フランス退官。2008年プレイヤード叢書(ガリマール社、フランス)全1冊の著作集Œuvres刊。2009年10月30日、100歳で逝去。著書『親族の基本構造』(1949)〔馬淵・田島監訳、全2巻、番町書房、1977/78、福井和美訳、青弓社、2000〕、『人種と歴史』(1952)〔荒川幾男訳、みすず書房、1970〕、『悲しき熱帯』(1955)〔川田順造訳、全2巻、中央公論社、1977、中公クラシックス、2001〕、『構造人類学』(1958)〔荒川幾男他訳、みすず書房、1972〕、『今日のトーテミスム』(1962)〔仲澤紀雄訳、みすず書房、1970〕、『野生の思考』(1962)〔大橋保夫訳、みすず書房、1976〕、『神話論理』四部作『生のものと火を通したもの』(1964)〔早水洋太郎訳、みすず書房、2006〕『蜜から灰へ』(1966)〔早水洋太郎訳、みすず書房、2007〕『食卓作法の起源』(1968)〔渡辺公三他訳、みすず書房、2007〕『裸の人』(1971)〔吉田・渡辺・木村他訳、二分冊、みすず書房、2008/10)、『仮面の道』(1975)〔山口・渡辺訳、新潮社、1977、新版、山口・渡辺・渡辺訳、ちくま学芸文庫、2018〕、『神話と意味』(1978)〔大橋保夫訳、みすず書房、1996〕、『構造・神話・労働——クロード・レヴィ=ストロース日本講演集』(大橋保夫編、みすず書房、1979)、『はるかなる視線』(1983)〔三保元訳、全2巻、みすず書房、1986/88〕、『パロール・ドネ』(1984)〔中沢新一訳、講談社選書メチエ、2009〕、『やきもち焼きの土器つくり』(1985)〔渡辺公三訳、みすず書房、1990〕、『遠近の回想』(共著、1988、増補、1990)〔竹内信夫訳、みすず書房、1991、増補新版、2008〕、『現代世界と人類学——第三のユマニスムを求めて』(川田・渡辺訳、サイマル出版会、1988、改題『レヴィ=ストロース講義——現代世界と人類学』、平凡社ライブラリー、2005)、『大山猫の物語』(1991)〔渡辺公三監訳、みすず書房、2016〕、『みる きく よむ』(1993)〔竹内信夫訳、みすず書房、2005〕、『ブラジルへの郷愁』(1994)〔川田順造訳、みすず書房、1995、中央公論新社、2010〕、『サンパウロへのサウダージ』(1995)〔今福龍太訳、みすず書房、2008〕、『月の裏側——日本文化への視角』(2011)〔川田順造訳、中央公論新社、2014)、『われらみな食人種(カニバル)』(2013)〔渡辺公三監訳、泉克典訳、創元社、2019〕他。

全5冊ご案内

(原著全4巻を最終巻2分冊として刊行)