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2018.11.29トピックス

医療通訳、司法通訳、行政通訳、手話通訳、学校での通訳、難民認定に関わる通訳から災害時の通訳まで

初の概論、水野真木子・内藤稔『コミュニティ通訳』[新装版]好評重版


登録外国人あるいは在留外国人の数の推移(上は1980-2017年、下は2006-17年)
『コミュニティ通訳』[新装版]より

医療通訳者の少なさや、法廷通訳人の不足、あるいは学校・教育の場での通訳の必要。それらは個々のトピックとしてとりあげられることが多い。いま強硬に押し進められつつある入管法改正の論議に関連して注目される場合もそうだ。
ここに、コミュニティ通訳という概念を立て、総体として《社会問題としての通訳》をとらえる初めての概論が本書(初版2015年)。好評を得て新装版(2018年7月)が版を重ねている。

病院や薬局で/警察や裁判で/役所の窓口や学校で。地域で暮らす日本語を解さない人のための、暮らしの中の通訳、それをコミュニティ通訳と呼ぶ。医療通訳・司法通訳・行政通訳を3本の柱として、手話通訳や、難民認定に関わる通訳、学校での通訳、災害時など有事のさいの通訳まで、本書は周到にカバーしている。
ひとくちに医療通訳といっても、たとえば病院を出てから、院外処方の薬局で、服薬指導がある。裁判の前に、警察での取り調べ通訳は、むしろ法廷での通訳以上に正確さが重要といわれる。DV(ドメスティック・バイオレンス)相談の窓口にも、通訳が必要。日本に在住している国際結婚カップルのうち、4分の3近くが日本人男性と外国人女性のカップルだという。
役所の外国人相談窓口では、ごみ出しから在留資格、生活保護、介護、児童手当や予防接種、賃金未払いや不当解雇、さまざまの問題に対応する。離婚にからむ在留資格の相談のかげに、児童虐待やDVの問題がかくれていたりもする。
学校では、文科省が定期的に調査する「日本語指導が必要な児童生徒」の数が増えている。学校生活を送る子どもたち本人だけでなく、保護者を対象にした通訳・翻訳も必要で、たとえば進路指導や生活指導の通訳、それに、学校からのたくさんの配布物の翻訳も。
さらに、災害時。大地震や洪水などの緊急時に備えて、地域住民や訪日外国人のために、多言語化だけでなく「やさしい日本語」がサバイバル言語になる。「やさしい日本語」は、在住の外国人にとってだけでなく、訪日観光客にとっての減災のためにも、共通言語として提唱されるようになってきている。

本書を開くと、コミュニティ通訳はまさしく日々の暮らしのあらゆる局面での通訳だということがよくわかる。日本語話者が当たり前に日常生活を送っているその場面で、もし日本語を解さなければいちいち言葉の壁が立ちはだかるのだ。本書で医療通訳・司法通訳・行政通訳の各章は、リアリティある事例から始まっている。

2020年東京オリンピック・パラリンピックのための通訳の態勢づくりも進むが、「ボランティア」をどう考えるかという論点も、本書にきちんと言及がある。

グローバル化の進む現代に、もう始まっている多文化共生社会。その未来像を思い描くために。平易に書かれたこの『コミュニティ通訳』をまず読んで知り、考えたい。移民政策、難民受け入れ、外国人労働者、技能実習生、観光立国、……

◆水野真木子・内藤稔『コミュニティ通訳』は、この本から生まれました



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