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坪内祐三『四百字十一枚』

坪内祐三『四百字十一枚』を刊行してから、一月が経とうとしている。こんな時期、五年前だったら担当編集者は、そろそろどこかに書評が出ないかなと楽しみにしていただろう。今はちがう。大書店での販売データが一日単位でチェックできるように、新刊に対する読者の感想がリアルタイムで伝わってくる。いわゆる「ブログ」が可能にしたことである。
その筋の流儀では、トラックバックすることが礼節なのだろうが、ここでは無断で部分引用させていただく。

最初に目にしたのは『書店員の話』(ブログ名・敬称略・以下同)。「まず敬愛している坪内氏の著作がみすず書房から出版されたことに感動している。古本、新本、あらゆる本のジャンルの本を読む読書人の中でも最も本を愛し、本をむさぼり食う雑読系の人種。それが坪内祐三氏である。」これに続いてなるほどと思わせるコメントが続き、「すべての書痴人に新たな読書欲と勇気を与える時代書評集」という版元顔負けのキャッチコピーまで頂戴した。

本を買ってくださる瞬間、読んでいる時間も、ブログだと目に見えてくる。「仕事に行く前に、どうしても用があり足早に出て行くことがあり本屋をババッと見た。元町まで来たが、新刊台で『四百字十一枚』があった。みすず書房の本は好きだけど置いている本屋はすごく少ない。ここで見つけてホッとする」(『なえ日記』)。こちらも見つけていただいて、ホッとする。

「臨時ニュースに盛り上がるテレビを消して、『四百字十一枚』を読み出す。100ページほど読んだ。坪内さんの好きな余談ができる長めの書評集。いや書評とくくる必要もない。本や本屋に関わる味わい深いエッセイ集だ。いろいろあるが、この本を読んでいる自分は確かにしあわせなのだと思わせてくれる」(『晩鮭亭日常』)

「ちょこちょこ読み進み、坪内祐三『四百字十一枚』読了。読み終えるのが惜しい本だった。それにしても、このタイトル、とてもいいなぁ。取り上げている本、全て読みたくなってくるから凄い。下手したら書評の方が面白い」(『帰ってきた不発連合―又は忘れじのバックドロップ』)何というか、読む人の熱がじわっと感じられる。

さきほどのブログでは、数日後、取り上げられた本に強く反応する。「前田愛さんを扱った章では、自分の大学時代がありありと思い浮かぶ。言及されている前田愛、磯田光一、谷沢永一の各氏が参加した座談会「批評と研究の接点・その後」は初出誌で何度も読んだ」(『晩鮭亭日常』)

そして岡崎武志さんのブログ『okatake日記』。著者から送られた本を受け取った日に、「朝日新聞社では、書評は売れないからと、前の連載分は晶文社から出て、今度はみすず書房から。しかし、晶文社から出ればそれらしく、みすず書房から出ればまたそれらしく見える。カバーに使われた絵は六浦光雄とわかった」という、さすがのコメントあり。数日後には「電車の中では坪内祐三『四百字十一枚』を。こういうタイトルにしたこと、読んでいくとわかる。つまりこの長さ、このスタイルが、坪内さんらしさがうまく出るってことなんだろうな」と書いてある。

新刊についてブログは、手にした方々の気持をこんなふうに知る機会を与えてくれる。うれしいことである。




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