みすず書房

「『四百字十一枚』とは妙なタイトルだが、これはそのまま月刊誌『論座』に連載時の一回の分量である。書評の十一枚はたっぷりある。つまり、内容紹介、意見、批評だけでなく、余談ができる。私はもともと余談好きの男だ。だからこの連載でも私は余談を楽しんだ。しかし、今回改めてゲラで通読してみて、その余談が貴重な(小さな)歴史の証言になっていることを感じた」
坪内祐三の書評は本屋の世界と連動している。東京の新刊書店だけでなく、古書店や古書展での偶然の(いや必然的な)本との出会いが、著者の「反応」を引き起こし歴史感覚を刺激する。そこにあるのは、のっぺらぼうの現在ではなく、襞に満ちたリアルな人間の世界である。
吉田仁『葉山日記』に始まり、ブラウン『アーモリー・ショウ物語』に終わる43本(2002年11月号〜2006年5月号)。丸山眞男書簡集、ロラン・バルト著作集、イーグルトンや小中陽太郎やブッチャーの自伝、遺稿集や回想、『風景』『銀座百点』のバックナンバー……何を読んでいても、坪内祐三は記憶の場を提示してくる。
変貌する都会と書店からの、同時代批評。

目次

ローカル日記三部作の「葉山日記」がついに単行本になった
漫画雑誌編集者の二冊の回想集
ターザン山本の語り下ろし対談集の第二弾
いよいよ『記憶の場』の刊行が始まった
三宿の古本屋で見つけた『六浦光雄作品集』
あのブックス・アンド・カンパニーについての本
伝説の古書店についての、しかも孫が書いた、本が出た
このところ、『風景』のバックナンバーを拾い読みしている
渋谷のパルコブックセンターで見つけた二冊のエッセイ集
アブドーラ・ザ・ブッチャーはストリートワイズである
写真は何に「まなざし」をそそぐのか
池袋ジュンク堂のトーク・セッションの謝礼で『徳田秋聲全集』第二十五巻を買った
国内「亡命」者の遺した珠玉の雑文集
『男どアホウ甲子園』と『ウルトラマン』と『略称・連続射殺魔』を作った人の自伝
ポーリン・ケイルの映画評論集が予告から十八年目にして刊行された
一九七四年四月、六十五歳の植草甚一は初めてニューヨークにいった
田村義也さんに装丁してもらいたかった一冊の本
感動の大安売りの時代に本当に感動出来る本
三島由紀夫の書簡が集大成された
少し昔の東京食べ物屋ガイドを、文字通り「雑読」している
テリー・イーグルトンとアルバート・フィニーは同じ町の出身だって
常盤新平の描く『ニューヨーカー』風ニューヨーク・ラブストーリー
小中陽太郎と海老坂武の新刊は続けて読むべきだ
小沢信男の新作は「二つの時代」を生きた人ならではの傑作である
丸山眞男の書簡集が完結した
三たびホリキリの季節
二年前に出た前田陽一の遺稿集「含羞のエンドマーク」を新刊で見つけた
吉田豪のインタビュー集『人間コク宝』はやはり凄く面白かった
銀座が銀座らしかった時代の『銀座百点』を読みふけっている
去年の暮れに早稲田の古本屋で偶然見つけた一冊の新刊本
ロラン・バルト著作集の『現代社会の神話』は『神話作用』の完全訳だ
月の輪書林からもらった二冊のオマケ
福田恆存の「解つてたまるか」の三七年ぶりの上演をみてきた
エドマンド・ウィルソンの真骨頂はジャーナリスティックな雑文にあり
高橋英夫の読書エッセイ集の最新刊
青木正美の『古書碑・弘文荘訪問記』は評伝文学の傑作だ
児玉清の描く信欣三の思い出が面白い
伝説のバー「ホワイト」が丸ごと一冊の本になった
柳田泉の『随筆明治文学』の東洋文庫化は本当に嬉しい
谷沢永一の『紙つぶて』「自作自注最終版」の刊行に寄せて
前田愛はいかにして都市記号論を体得していったのか
十年前に私は、タヌキの置き物の飾ってある定食屋で岡崎武志と昼食を共にした
神保町の東京堂書店で『アーモリー・ショウ』が平積みされていた
あとがき

関連リンク