みすず書房

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ブルーノ・ムナーリ『芸術家とデザイナー』

萱野有美訳 2008年3月12日刊行

ムナーリの、またもや大胆不敵なテーマ設定である。
創造の霊感「ファンタジア」について、ひるまず臆せず分析を試みる姿にも瞠目したが、この本では「芸術家」と「デザイナー」の違いを分析してみせよう、というのである。いったいどのようにして?

まず、目次。見開きの左ページに「芸術家」、右ページに「デザイナー」を配置して、見出し項目がどちらの特質・資質についてなのかをふり分ける。共通するものについては、両方に。たとえば、左ページ(芸術家)には「個人の様式」、それに対項する右ページ(デザイナー)には「様式の不在」。両方に置かれてあるのは、たとえば「スター主義」。いわば芸術家とデザイナーの対照表になっている。
本文は、ムナーリ曰く「一冊の本があたかも連続した一枚の紙であるように」レイアウトされ、軽やかな足どりのまま実にさまざまな方法で「芸術家」と「デザイナー」を行ったり来たり、俎上にのせて観察・記述してゆく。ときに大芸術家・思想家たち(毛沢東、フロイト、バルザック、モネ、ピカソ、マルクスetc.)を円卓に集め座談会を開いたり、ときに自作の製品の特性を誇らしげに解説したり、ときに美術批評をスタイル別にパロディしてみたり……。文字通り“あの手この手”のこの芸当こそが、ムナーリの無謀な挑戦を支えているのだろう。そして、それはムナーリの身を挺した(?)読者へのメッセージでもある――あの手この手を尽くしてみれば、どんな難題も切り抜けられる(はず)。

さて、多種多彩な活動を繰り広げたムナーリこそ、どちらの立位置をとるというのか? 気になる方は、本書をどうぞ!




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