みすず書房

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みすず書房のブルーノ・ムナーリ

『ファンタジア』『デザインとヴィジュアル・コミュニケーション』
『モノからモノが生まれる』『芸術家とデザイナー』

いま、横須賀美術館で「ブルーノ・ムナーリ展――アートの楽しい見つけ方」が開催されています[終了]。この季節に、目の前に海が広がる船の中のような建物で、自然を観察するのが大好きだったムナーリ先生が子供たちと楽しそうにワークショップをしている姿を空想すると、なんだかさわやかな気持ちになります。

ムナーリと海、といえば、海岸や河原の石ころからつくった作品(?)があります。自然の造形そのままを生かして作品に仕上げるのがムナーリ流ですが、これらの石もいつの間にかアートに早変わり――

〈石はひとつひとつが発見に満ちた宇宙、さまざまな形、色、質感、凹凸……でできた世界。
石は海と川が造った彫刻。石はひとつひとつ違っていて、2つと同じものはない。それは芸術作品でいう「一点もの(ユニーク・ピース)」〉――『遠くから見たら、島みたい』より

ムナーリにかかるとなんでも作品になってしまう、まさにマイナー・ポエットと呼ばれるにふさわしいと思うのですが、ムナーリはいつも「人がつくるものはどれもすべてユニーク・ピース」ということを伝えていました。その思いから、子供たちの感性を伸ばし、発展させるためのワークショップを行っていましたし、私たち大人にも、今度はプロフェッショナルとして社会のなかでモノを生み出すとはどういうことかを教え、具体化する方法を惜しみなく、丁寧に書き留めてくれています。その一部が、小社から刊行している4冊の本にまとめられています。

ムナーリの発想の全体を知りたい人には、『ファンタジア』がおすすめです。「創造力/クリエイティヴィティ」とはどのような力か? だれもが持っているこの力をどのようにすれば稼働させることができるのか――言葉や文章にして説明するのがなかなか難しそうなテーマを、しかし明晰な言葉づかいで、図版を駆使して各論ごとに整理し、解説しています。
『デザインとヴィジュアル・コミュニケーション』『モノからモノが生まれる』は、これからデザインやモノづくりに専門的に関わっていこうとしている人たちは必読でしょう。さまざまな角度から平面や立体、製品のヴィジュアル・サンプルが集められ解説されていて、シンプルな見かけを観察することで、その内部を支える本質的な構造を把握することができることを教えてくれています。
『芸術家とデザイナー』は、デザイナーを目指す人たちに向けて、心構えを説いています。このモノがあふれる時代に、新しいモノを作り出す仕事につく人たちに励ましと助言を与えてくれると同時に、「過剰」を嫌悪するムナーリの厳しい職業倫理を見てとることができるのです。
(2010年夏)




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