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辺境から眺める<品切>

アイヌが経験する近代

HENKYO KARA NAGAMERU


今年もまた、日本とロシアの首脳のあいだで「北方領土問題」が議論された。しかし「北方領土」とは誰のためのものなのか。北方領土と呼ばれる島々や、かつては樺太という名だった現サハリンの住民は、二つの巨大国家の交渉を、どのように考えるのだろう。本書は、アイヌを中心に、日本とロシアという国家が先住民族を同化・差別化してきた歴史を詳細に追いながら、辺境という視座から、われわれの「いま」と「今後」を考える。

「植民地時代の探検家たちがおこなった旅は、帝都の中心から出発し、外に向かい、〈奥地〉にまでいたるものだった。彼らは、植民地支配をおこなう社会の物理的な武器ばかりでなく、知的な武器をも携えて、一つひとつ道を切り拓き、商人、入植者、伝染病がその後を追った。旅から持ち帰ったのは大量の原材料であった。鉱物のサンプル、民族誌学的〈骨董品〉、地図、未知の人びとの話、これらはやがて植民地支配権力がもつ拡張する知識体系のうちに編入されていった。本書でおこないたいのはこの過程を転倒する作業である。〈奥地〉の心臓部から、外に向かい、国家/国民的およびグローバルな帝都にまでいたり、帝都型思考様式を新たに問い直す方法を持ち帰る、そのような旅路への出発である」

著者はオーストラリア在住の気鋭の日本研究者。現代思想や近現代史・アイヌ問題など、その緻密な考察と開かれた問題提起は、じつに鮮やかである。戦前に樺太に住んでいた人たちとともにサハリンに向かう終章の紀行文もまた、みごとだ。


目次


序 辺境から眺める
辺境のイメージの変化/時間をつうじた境界/進歩という問題/ハリネズミと狐/先住民が経験する近代/出発点と行く先

第1章 フロンティアを創造する――日本極北における国境、アイデンティティ、歴史
国境線を創造する/徳川時代の植民地主義/「日本」を創造する/現在における過去/結論

第2章 歴史のもうひとつの風景
現在へむかう多様な道――オホーツク海域の事例/商業植民地主義の衝撃/結論

第3章 民族誌学(エスノグラフィ)の眼をとおして
グローバルな民族誌学/国境を横断する交換――間宮林蔵とレオポルト・フォン・シュリンク/レフ・シュテルンベルグと、民族の境界線の問題/ロシア民族誌学と、日本人による起源の探求

第4章 国民、近代、先住民族
原住民の名で――ソヴィエトの理論と北方小民族/記憶喪失としての同化――北方先住諸民族にたいする日本の政策/共有された分離

第5章 他者性への道――20世紀日本におけるアイヌとアイデンティティ・ポリティクス
主体性、帰属、アイデンティティ/ある程度の人間の数/保護民に理屈言ふべき権なしと/進化途上にある人種/人種から文化へ/自己決定とエコロジカルな自己

第6章 集合的記憶、集合的忘却――先住民族、シティズンシップ、国際共同体
シティズンシップの構造/シティズンシップと侵入者国家(インヴェイダー・ステイト)/シティズンシップを再考する/人権、公民権(シヴィック・ライツ)、先住権

終章 サハリンを回想する
「記憶」(メモリー)と「回想」(リメンバリング)/日本人の「戦争体験」/樺太植民史/わあっ、懐かしい/集合的「記憶」の権威/牛の銅像/日本はたいしたことない/大きな「記憶」と小さな「回想」

あとがき
訳者付記

索引


著訳者略歴

テッサ・モーリス=鈴木
Tessa Morris-Suzuki

1951年イギリス生まれ。現在オーストラリア国立大学教授。専攻は日本経済史、思想史。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
大川正彦
おおかわ・まさひこ

1965年東京生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学、政治理論・政治思想史専攻。現在東京外国語大学助教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「辺境から眺める」の画像:

辺境から眺める

「辺境から眺める」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/312頁
定価 3,300円(本体3,000円)
ISBN 4-622-03089-6 C1010
2000年7月18日発行
<ただいま品切です>