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アーレント政治思想集成 1

組織的な罪と普遍的な責任

ESSAYS IN UNDERSTANDING

1930-1954


〈かつてヒュームは、人間の全文明は「蚕や蝶がそうであるような、一つの世代がその段階をいっせいに過ぎ去ってこれとは別の世代がそのあとに続くなどということはない」という事実に立脚していると述べた。けれども、歴史の分岐点においては、言いかえれば危機の高まりにおいては、蚕や蝶のそれに似た運命に人間の一世代が見舞われることもあるかもしれない。というのも、旧いものの衰退、そして新しいものの誕生は、連続性に結びついた事柄であるとはかぎらないからである。世代と世代の間、何らかの理由でまだ旧いものに属している人びとと、破局を文字通り膚で感じていたりすでに破局とともに成長した人びととの間では、鎖は断ち切られ、「虚ろな空間」、いわば歴史上の誰のものでもない土地が浮かび上がってくるが、これを言い表わすには「もはやなく、そしてまだない」という言葉しかないだろう。ヨーロッパではこのような連続性の絶対的な中断は第一次世界大戦のさなかに、そして戦後に起きた。〉
(「〈もはやない〉と〈まだない〉」)

このように、ハンナ・アーレントの思考は、大戦間期という虚ろな空間で、まずは培われた。その後、ナチズムの席巻するドイツからパリをへてニューヨークに亡命し、その地で「アウシュヴィッツ」の事実に接することで、絶望をくぐりぬけた著者の世界に対する見方は、徐々に確固たるものになってゆく。
20世紀を具現した思想家の前半生(1930-54)の思考の全貌を、全2巻で公刊。本巻には、不朽の論考「実存哲学とは何か」をはじめ22篇を収録する。


目次


編者序文

「何が残った? 母語が残った」――ギュンター・ガウスとの対話
アウグスティヌスとプロテスタンティズム
哲学と社会学
セーレン・キルケゴール
フリードリヒ・フォン・ゲンツ――没後百周年の、1932年6月9日に
ベルリンのサロン
女性の解放について
フランツ・カフカ 再評価――没後二〇周年に
外国語新聞における国外事情
「ドイツ問題」へのアプローチ
組織的な罪と普遍的な責任
悪夢と逃避
哲学者および歴史家としてのディルタイ
ファシスト・インターナショナルの種
キリスト教と革命
権力政治が勝ち誇る
〈もはやない〉と〈まだない〉
実存哲学とは何か
フランス実存主義
コモン・センスの象牙の塔
地獄絵図
『国民(ザ・ネイション)』


著訳者略歴

ハンナ・アーレント
Hannah Arendt

1906年、ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
ジェローム・コーン
Jerome Kohn

1931年に生まれる。現在ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチのハンナ・アーレント・センター所長。共編著に『ハンナ・アーレント――20年後』(1996)などがある。

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
齋藤純一
さいとう・じゅんいち

1958年に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得。 現在横浜国立大学教授。 著書『公共性』(岩波書店、 2000)、『親密圏のポリティクス』(編著、 ナカニシヤ出版、 2002)。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
山田正行
やまだ・まさゆき

1957年に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。政治思想専攻。現在 東海大学助教授。著書『西洋政治思想史II』(共著、新評論、1995)。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
矢野久美子
やの・くみこ

1964年に生まれる。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。学術博士。現在フェリス女学院大学国際交流学部助教授。思想史専攻。著書『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』(みすず書房、2002)。

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「アーレント政治思想集成 1」の画像:

アーレント政治思想集成 1

「アーレント政治思想集成 1」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/328頁
定価 6,048円(本体5,600円)
ISBN 4-622-07012-X C3031
2002年10月21日発行

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