故国喪失についての省察 2
REFLECTIONS ON EXILE AND OTHER ESSAYS
判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 440頁 |
定価 | 5,720円 (本体:5,200円) |
ISBN | 978-4-622-07204-1 |
Cコード | C1010 |
発行日 | 2009年6月25日 |
備考 | 現在品切 |
REFLECTIONS ON EXILE AND OTHER ESSAYS
判型 | A5判 |
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頁数 | 440頁 |
定価 | 5,720円 (本体:5,200円) |
ISBN | 978-4-622-07204-1 |
Cコード | C1010 |
発行日 | 2009年6月25日 |
備考 | 現在品切 |
サイードの35年にわたる批評実践の集大成とも言うべき評論集を完結する第2巻。原書の後半にあたる本巻が収録するのは1988年から2000年までのエッセイ、論文、講演など16編。テーマは硬軟多岐にわたる。
本巻前半に収められた映画『ターザン』論や往年の名ベリー・ダンサー訪問記には遊び心も見られ、サイードの幅の広さが楽しめる。それに続くのは、この大作読破・再読の契機にもなるだろう出色の『白鯨』論。のちの数章ではアドルノ、ルカーチ、グラムシらを中心に論じて『オリエンタリズム』と『文化と帝国主義』を明解に補完する。それらの議論が明晰で説得力をもつのは、「立場を取る」(30章)という、一見あたり前ながら非凡な知性と強靭さを要求する生き方を、知識人サイードが実践してきたからに他ならない。
そして終章近くの「敗北とは何か」と題された瞠目すべき章では、サイード思想の補遺とも言うべき『晩年のスタイル』の萌芽を見出すだろう。そこでは暫定的結論として「根拠のないオプティミズムではない希望」が示され、困難な時代を生きるわれわれに勇気をもたらす。
本書によって俯瞰できるサイードの批評の軌跡には、いくつかの問題意識が通底する——オリエンタリズムの終わりなき再生産、時間的思考の限界を乗り越える地理的思考、不条理の象徴となったパレスチナ問題など。これらは、多様なトピックをめぐって変奏される主題でもある。その読解と分析の好例は、示唆にとむ「訳者あとがき」に示されている。
18 ジッロ・ポンテコルヴォを求めて
19 マフフーズ以降
20 ジャングルからの声——ジョニー・ワイズミュラーのターザン
21 ベリー・ダンサーへの賛歌——タヒア・カリオカ
22 『白鯨』を読むために
23 知の政治学
24 アイデンティティ、権威、自由—支配者と旅行者
25 ナショナリズム、人権、解釈
26 「移動する理論」再考
27 歴史、文学、地理
28 世界に抗する——エリック・ホブズボーム
29 バッハの天才、シューマンの奇矯性、ショパンの過酷さ、ローゼンの贈り物 = 才能
30 抵抗すること、そして立場を取ること
31 沈黙から音へ、そしてふたたび沈黙へ—音楽・文学・歴史
32 敗北とは何か
33 定義の衝突——サミュエル・ハンチントン
訳注
解題
訳者あとがき
原注
索引