みすず書房

DSM-V研究行動計画

A RESEARCH AGENDA FOR DSM-V

判型 A5判 タテ210mm×ヨコ148mm
頁数 448頁
定価 7,920円 (本体:7,200円)
ISBN 978-4-622-07394-9
Cコード C3011
発行日 2008年7月23日
備考 現在品切
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DSM-V研究行動計画

アメリカ精神医学会が刊行しているDSM(『精神疾患の診断・統計マニュアル』)というものがある。第一版は1952年刊、それまでの世界保健機関刊行のICD(国際疾病分類)に記載された精神疾患の項目を改変拡大する目的でつくられ、現在は1994年刊行の第四版(DSM‐IV)が最新版である。当初の意図はともかく、第三版あたりから、DSMは世界中の精神科医にとって絶対的存在となった感がある。わが国においても。果たしてそれでよいのか。
本書はDSM‐IV刊行直後から、その問題点を詳細に洗い出し、来たるべき第五版に向けて、各分野の専門家が描き上げたアジェンダ=研究行動計画である。各疾患の分類や命名の方法は正しいのか。脳科学や遺伝学と精神疾患の関係の実際はどうか。DSM‐IVの重大な空白であった人格障碍と関係障碍をどう考えるべきか。現行のカテゴリー的なアプローチに代わるディメンジョナル・モデルの採用の可能性は? 各文化や人種・ジェンダー・宗教の違いなどを体系にどう組み込むことができるのか。精神科医の日常の困難とマニュアルを関係づけようとする真摯な姿勢が、ここにある。
本書の内容はDSM‐Vのドラフトではなく、むしろ現代の精神科診断分類学の展望と研究課題の集成として読まれるべきであろう。有効性と限界を同時にはらんだマニュアルよりも、このプロセスそのものが重要ではないか。
「本書は、計画でもあるが、それよりも予想であり推測であり勧告である。論争の書でもある。科学としての精神医学の目下の進歩の外挿による将来像もある。もっとも、本書の白眉は現在のDSMの欠点とされる発達、人格障碍、文化、エスニシティに重点がおかれ、その部分の文章には一段と迫力がある」(中井久夫)。最新動向にも及んだ黒木俊秀による周到な解題を付す。

目次

謝辞
はじめに

第1章 DSM-Vにおける分類命名法の基本
はじめに
精神障碍をいかに定義するか
妥当性
カテゴリーをディメンジョンに代えるか?
DSM-VとICD‐11のギャップを少なくする
DSM-Vを文化横断的に使用する
非精神医学的場面においてDSM-Vを使用するには
結論

第2章 病態生理学にもとづく分類体系のための神経科学研究行動計画
精神障碍の遺伝学の現状
精神障碍の神経画像学の現状
精神障碍の死後脳研究の現状
今後のための青写真
結論的評釈——未来に向けての診断体系試案

第3章 発達科学の進歩とDSM-V
文化、文脈、発達
発達科学の進歩は分類の力価を向上させる好機会である
DSM‐IVを拡充して将来の進歩の舞台を用意する
次の十年は何をどのように研究するべきか——研究行動計画の決定
結論

第4章 人格障碍と関係障碍
——DSMの重大な空白に立ち向かう研究行動計画
人格障碍と人格特性
関係障碍
DSM-Vに対する提案でいわんとすること

第5章 精神障碍と能力障害——両者の関係を再考する時ではないか?
DSM‐IVにおける機能障碍と能力障碍
能力障碍を定義し評価する
DSM‐IVの文脈
能力障碍の定義、予防、治療の研究計画
結論

第6章 びっくりハウスの向こう側へ
——文化と精神医学的診断に関する研究行動計画
文化的変数と精神医学的診断
文化と精神病理——一般論的問題
研究行動計画——文化と精神医学的診断
文化と診断に関する研究の視野と限界
結論

付録(第6)章 「精神医学的診断と文化」研究の領域と主要問題リスト

解題(黒木俊秀・松尾信一郎)
訳者あとがき(中井久夫)
執筆者紹介
引用文献
索引